2012
08/09
木
1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:30:41.95 ID:zbruwpmn0
※ このSSはフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
日本の夏。
キンチョーの夏。
蚊取り線香こそないものの、事務所はまさに典型的な日本の夏だった。
P「あつい……」
高い湿度とあいまって、不快指数はトンでもない数値をたたき出している。
年代物のエアコンは老体に鞭打って冷風を吐き出そうとしているが
亜美「にいちゃーん、これ全然涼しくないよう……」
真美「真美溶けてきたかも……」
なにが原因なのかぬるい風を送るだけで、扇風機とたいして変わらない。
無いよりはマシかとぶら下げた風鈴は、そよとも動かず首吊り死体みたいで気が滅入りそうだ。
そんな日の話だ。
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4 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:32:59.05 ID:zbruwpmn0
『次のニュースです。都内を中心に原因不明の怪現象が発生しました』
P「カイゲンショウ……?」
放置したアイスみたいにドロドロに溶けた脳は、うまく言葉を咀嚼できていない。
亜美「あー……、それ知ってる。一日も休まないで学校に行くともらえる……」
真美「それカイキン賞やないかーい……」
ジリジリと肌を焦がす熱気に双子も相当参っているようで、合皮のソファーにだらしなく体を預けて萎びている。
漫才にもキレが無く少々心配になった。
そんなことを考えながら、ネクタイを緩めて風を送り込んでいると
つけっぱなしのテレビがおかしなニュースを伝えてきた。
『女性の胸が急激に小さくなる事件が発生しました。
現場ではたいへん混乱している模様です。
原因については医療・警察関係で調査中で……』
6 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:36:37.67 ID:zbruwpmn0
P「なにそれ」
亜美「溶けたんじゃないのー?」
真美「こんだけ暑ければありえるかもね~」
P「ないない」
デスクに向かって真っ白な書類と戦っていると、汗がポタリとたれて小さなドームを作った。
ブラインドを下ろしてもまるで涼気を得られず、事務に集中することはもはや不可能だ。
俺は潔く業務を諦めて、冷凍庫のガリガリくんを求めに立ち上がる。
座りっぱなしだったせいでズボンにまで汗が染みこんでひどく不快だった。
8 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:40:17.02 ID:zbruwpmn0
P「お前らも食うか? ガリガリくん」
アイスは一日一本。それは765プロの鉄の掟。
それでもこの酷暑ならば律子も大目に見てくれるだろう。
亜美「食べる食べるー!」
真美「さっすが兄ちゃん!」
汗まみれの二人が飛びついて来るのを牽制し……
P「……え?」
亜美「どしたの?」
真美「なんかついてる?」
ようとして顔が強張った。
11 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:42:57.42 ID:zbruwpmn0
P「お、お前ら、胸が……」
指を差そうとして思いとどまり口頭で伝える。
亜美「ん?」
真美「なんじゃこりゃー!」
最近成長著しく目のやり場を困らせてきた乙女の象徴、すなわちおっ○いが
亜美・真美「「お○ぱいがなくなってる!」」
消滅していた。
P「いやぁ、なんか懐かしいなぁ」
一年前はあんな感じだったよね。
真美「ロ○コンは黙ってて」
亜美「おーい、おっ○ーい、帰ってこーい」
棒アイスをかじりながら双子を微笑ましく見守っていた。
亜美はソファーの下や、ロッカーの裏を覗き込んで逃げ出した乳を捜索中。
真美はなにやら深刻な顔つきで服を引っ張って覗き込んでいた。
12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:46:20.79 ID:zbruwpmn0
P「まさかあんなアホみたいなニュースがホントだったなんてねぇ」
棒をかじりながら他人事のように呟いた。
ちゅーちゅーと音を立ててすすると甘みがあっておいしい。
亜美「兄ちゃんも一緒に探してYO!」
真美「そうだよ! これじゃあ、お仕事出来なくなっちゃうよ!」
P「え? あ、そうか……」
氷菓でクールダウンした頭脳がようやく動き出す。
呆けている場合ではない。
P「よし……、まかせろ!」
勢い込んで立ち上がり、アイスの棒を気合で噛み千切った。
亜美「うわ! 汚ねー!」
真美「こっち飛ばすなよー!」
評判はよろしくなかった。
13 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:52:17.32 ID:zbruwpmn0
P「とは言ったものの……」
素人の俺たちに出来ることなんてたかが知れていた。
P「とりあえず現場検証からだな」
亜美「現場研修?」
真美「ベンキョーすんの?」
P「もっと勉強してね。
お前ら胸が小さくなった時の事覚えてないか? なんでもいいんだけど」
瞬間的に縮んだのでなければ違和感くらいはあってもおかしくないはずだ。
一瞬『お○ぱい泥棒』なる単語が頭をよぎったが、当然顔には出さなかった。
15 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:55:17.60 ID:zbruwpmn0
亜美「うーん……、気がついたら無くなってたよ」
真美「真美もー。事務所に来たときはあったのに……」
P「ふむ……」
俺は珍しく真剣に考えた。
眉間のシワを揉みながら、足を組み替えて推理を始める。
亜美・真美「「…………」」
緊迫した雰囲気を感じ取ったのか双子も口を閉ざした。
二人の胸元を見れば、服がたるんで首元からヒモが見えた。
P「青と……、黄色」
亜美「!」
真美「なになに!? 何か分かったの!?」
しまった。鋭い観察眼が仇となったか。
しかしここでバカ正直に答えようものなら、
タダでさえ悪い俺の扱いがハム蔵のエサと同じレベルになってしまうだろう。
俺は乱れた心根を隠して不敵に笑った。
17 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 22:59:24.18 ID:zbruwpmn0
P「あぁ、謎はすべて解けた」
間を取るためにゆっくりと椅子から立ち上がり、ソファーの前までさらに速度を緩めて歩いた。
P「これは地方妖怪チチシボミの仕業だ」
亜美・真美「「ナ、ナンダッテー!!」」
ツッコミを期待したのに信じられてしまった。
仕方なくデマカセを続けた。
P「チチシボミは関東地方に伝わる妖怪でな。
その昔胸の小さい女性がそれを妬んで、見境無く胸を小さくさせたと言う……」
亜美・真美「「うんうん!」」
P「………………」
困った。
19 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:04:59.76 ID:zbruwpmn0
亜美「それでどうすれば元に戻るの!?」
真美「早く教えてよ~」
期待でキラキラと光る四つの瞳が眩しくて心苦しい。
引っ張り続けるのも限界だった。
P「犯人は……」
亜美・真美「「犯人は?」」
P「お前だぁぁあぁあぁぁ!!」
ドア向こうの人影を指差した。
千早「それで? 何回殴っていいんですか?」
P「うぶぶぶぶ……」
顔を引っ張られたままなので上手く喋れない。
P「ごめんばばい……」
ペシンと音を立ててほっぺたが元に戻った。
21 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:10:01.22 ID:zbruwpmn0
千早「それにしてもコレは一体……」
P「うん、俺にも原因が分からないんだけど……。どうもこの辺りで急に起きた現象みたいだ」
ガックリとうな垂れた双子を見て正直に生きようと思った。
P「あ……」
千早「? なんですか?」
P「う、うん……」
少し迷ったが覚悟を決めて千早に聞いた。
P「ち、千早も胸小さくなった? よね? だってペタンコだし……」
千早「………………」
浮かんだ青筋が色白の肌に映えて鮮やかだった。
22 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:11:15.03 ID:dMX+D4Wx0
吸い出そう(提案)
23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:12:35.00 ID:zbruwpmn0
ヒリヒリと痛む頬を冷やしながらネットで情報を集めていると、ドタバタと足音が聞こえてきた。
すりガラス越しにリボンが見えて春香だと分かった。
ドバーン!
春香「プププププププ!」
P「どうした春香。口から屁が出てるぞ」
挨拶代わりに一発殴られた。
プロデューサーは打たれ強くなくては勤まらないのだ。
24 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/08/08(水) 23:14:55.78 ID:e6BvUZU60
このダメっぷりは反則しまくるPか
25 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:17:02.10 ID:zbruwpmn0
春香「プロデューサーさん! 萎乳ですよ!萎乳!」
P「春香、お前もか!」
ぺたんと窪地になった胸は哀れなほど平らで千早と並んでも遜色が無い。
俺は可哀想になってクレーターをさすった。
P「かわいそうに……、こんなにへこんでしまって……」
硬い胸はまさに洗濯板と呼ぶに相応しく、骨がゴツゴツと当たった。
つい涙声になってしまうのもいたし方あるまい。
春香「あ、わたし代わりに調べておきますね」
P「あれ?」
千早「…………」
4発殴られた。
肝臓、みぞおち、アゴ、左のこめかみ。
全部急所という辺り、千早にはボクシングの才能があるのかもしれない。
本人は喜ばないだろうけど。
27 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:22:35.64 ID:zbruwpmn0
春香がネット検索しているのを見ていると、後ろから声をかけられた。
小鳥「ただいま帰りました……」
春香「あ、おかえ……」
春香のセリフがちぎれて消える。
P「まさか!?」
ダイナミックに振り返ると小鳥さんの顔に縦線が入っていた。
小鳥「は、ははは……。どこかに落としちゃいましたよ……」
悲哀が色濃く表情に出ていて俺はなんと言えばいいのかわからなくなった。
28 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:26:48.50 ID:zbruwpmn0
小鳥「交番に行ったんですけど、届いてないって……。うぅ……」
P「うん……、当たり前じゃないですか……。なに言ってるんですか小鳥さん……」
お○ぱいが落ちてたら俺だって拾って帰りますよ。
小鳥「こんな胸じゃますます男の人が寄ってこなくなっちゃう……」
P「まだ諦めてなかったんですね……」
ギリギリギリギリ……。
亜美「で、出たー! ピヨちゃんのアイアンクローだぁ!」
口は災いの元。
こめかみに突き刺さる指を感じながら、俺は先人の知恵に感心した。
30 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:31:16.51 ID:zbruwpmn0
P「しかし、こうやって並ぶと壮観だなぁ」
試しに横一列に並んでもらうと誰が誰だかわからない。
視線は一直線に壁に突き刺さって大変見通しがよかった。
伊織「なにバカな事やってるのよ」
P「お、伊織か。おはよう」
あいさつをしながら胸を見ると
P「あれ? 変わってない……」
伊織「なにが? というかどこ見てるのよ! 変態!」
出会って5秒で罵倒された。
ゾクゾクしてると亜美と真美が俺の両脇から顔を出して不満を漏らす。
31 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:31:47.52 ID:zbruwpmn0
亜美「いおりんずるい!」
真美「そーだそーだ!」
どうやら伊織は貧乳にカテゴライズされたようだ。
伊織「はぁ?」
事情を飲み込めていない伊織に今日の怪現象を仔細に説明する。
千早だけがどこか嬉しそうな顔をしていた。
33 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:35:11.31 ID:zbruwpmn0
伊織「そんなバカな事が本当に……?」
しぼんだ乳を見てもなお半信半疑のようだ。
かくなる上は脱いでもらうしかないと、俺がハァハァしていると春香が素っ頓狂な声をあげた。
春香「わ、わかりました! 原因はイバラキです!」
その単語を聞いた瞬間全員が青ざめた。
小鳥さんは失禁までしていた。
37 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:40:03.47 ID:zbruwpmn0
無理も無い話だ。
ここでイバラキについて軽く触れておこう。
イバラキは年中暑い。
納豆菌が増殖する際に熱を発するからだ。
領土には大量に積まれた藁が所狭しと置かれ、人が住むのに適さない。
かつては風光明媚な土地として知られていたのだが、
日本最後の秘境グンマーと軍事国家トチギの戦争を上手く立ち回ろうとして……失敗した。
トチギ人はイバラキの裏切りを恐れて、グンマー人は補給経路を立つために、それぞれが攻撃したのだ。
鉄火と投石の集中砲火を受けたイバラキは、今や人口三千人にも満たない不毛の荒野となった。
当然のことながら一般人の立ち入りは禁止されている。
41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:44:29.19 ID:zbruwpmn0
P「イバラキ……、どういうことなんだ」
粘つく口を開いて声を絞り出した。
国境には分厚い鉄壁と頑強な兵が置かれ、あちらからの介入は不可能に等しいはずなのに……。
春香「ミトを中心に巨大な魔法陣が描かれているのを衛星で観測できたそうです。
これは報復ですよ! 報復!」
全員「………………」
重い沈黙が場を支配した。
呪いを解かなければ貧乳を解除できない。
だがイバラキに行くということは、すなわち死を意味するからだ。
P「……政府の見解はどうなっているんだ?」
パンピーには出来ないことも国なら対処できるだろう。
俺は何度も裏切られたというのに愚かにも期待してしまった。
春香「なぜか謝ってます」
P「ちくしょう! 謝罪外交じゃ何も解決できないよ!」
デスクをグーで殴ると思ったよりも痛かった。
43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:49:08.36 ID:zbruwpmn0
千早「いいじゃないですか。人類みな平等、楽しく行きましょう。なに、胸がなくても人は笑えるんですよ」
伊織「こうなったら私たちでやるしかないわね」
P「手があるのか伊織!」
千早「そもそもたかが胸囲のサイズで人が差別されるなんておかしいと思いませんか?
数字に意味なんかないんですよ」
伊織「ええ、水無瀬財閥が密かに開発した対ナットウキナーゼアーマー。
略してANAを使えばあるいは……」
P「そうか、よし早速行くぞ!」
亜美・真美「「おー!」」
千早「だいたい胸が大きくてもいい事ありませんよ。肩はこるし服はサイズが無いしジロジロ見られるし」
P「じゃあ小鳥さん、留守番をお願いします。……それとちゃんと掃除しといてくださいね」
小鳥「はーい」
ドアを閉めても千早の演説はまだ続いていた。
45 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:53:16.84 ID:zbruwpmn0
P「着いたか……」
見上げれば全てを拒絶するような壁だ。
黒く重い鉄の壁は左右を見ても切れ目がなく、どこまでも続いているみたいだ。
筋肉質の大男が使い込まれた突撃銃を構えながらも、どこか不安げな表情で門を見ていたのが印象的だ。
ここはサイタマの最果て、奥秩父。
かつてはここから、ジョウバン線と呼ばれるローカル鉄道が週に一度だけ運行していたそうだが、
今は赤錆の浮いたレールがかろうじてその名残を示しているだけだ。
47 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/08(水) 23:58:23.27 ID:zbruwpmn0
亜美「くちゃい……」
風が吹くと臭気が目に染みる。
納豆大国イバラキの存在をありありと感じた。
伊織「さぁこれを着て。イバラキに生身で入ったら即死するわよ」
真空パックされたANAを受け取る。
このスーツが俺たちの生命線なのだ。
そう思うとずっしりとした重みすらなんとも頼りない。
春香「こ、怖いなぁ……」
俺も怖い。
出来れば留守番がよかった。
P「任せておけ、俺が先頭に立つからな」
春香「プロデューサーさん……」
お調子者の自分が憎い。
49 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:03:45.32 ID:zbruwpmn0
真美「これでいいのかな? どう?」
春香「宇宙服みたいだね」
一通りANAの説明を受けて準備完了だ。
P「ほら早く乗った乗った」
強固な装甲車は意外と居住性が高い。
ゆったりとしてて革張りのシートは豪奢だ。
伊織「当たり前でしょ? 私が乗るんだから」
苦笑しながら後部座席に座ろうとすると引き止められた。
伊織「なに後ろに乗ろうとしてるのよ。アンタは運転手でしょ」
P「え、マジ?」
現地までは寝ていようと思ってたのに。ガッデム。
51 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:08:34.83 ID:vvsKt5Jb0
渋々運転席に乗り込むと春香が助手席に座った。
P「後ろじゃなくていいのか? 退屈だと思うぞ」
春香「え? えへへ……、大丈夫ですよ。
それにプロデューサーさん一人だと道を間違えるかもしれませんから」
P「春香……」
こいつ……俺を全然信用してないな。
事故る時は助手席側から突っ込むことにしよう。
そう思った。
52 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 00:09:47.13 ID:N0wfHz+R0
ひでえwwww
53 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:13:05.63 ID:vvsKt5Jb0
やたらとデカイ鍵をひねると巨大なエンジンが呼吸を始めた。
内燃機関の爆発が重厚な車体を震動させる。
P「よし。いくか」
春香「いきましょう!」
ギアを入れてアクセルを踏み込む。
軽くタイヤが滑ってから大地を捉えると勢いよく前進した。
車一台分だけ開いた門を潜り抜けると、白い大地がどこまでも続いている。
俺は怖気づきそうな自分を叱咤しながらハンドルを操った。
真美「待っちくりー!」
サイドミラーを見ると、真美が門を抜けようとして憲兵に取り押さえられていた。
亜美「ま、真美ー!」
P「真美はこの戦いに着いて来れそうも無いからな」
後頭部に刺さる冷たい視線を感じて言い訳をした。
まだ乗ってなかったとは……。
まったく気がつかなかった。てへ。
57 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:20:14.89 ID:vvsKt5Jb0
しばらく車を走らせると景色に変化が訪れた。
まばらな樹木に藁が巻きつけられ、空気が茶色い。
微細な糸がフロントガラスにへばりつき、ワイパーを動かし続けなければならなかった。
春香「ビルとかないんですね」
亜美「元々こうなの?」
朽ち果てた藁葺き屋根の民家は人がいなくなってから数年は経っているだろう。
今は納豆まみれになってとても人が住めるようには見えなかった。
廃墟。過疎化。死の街。
どの言葉も相応しく、俺は背筋が冷たくなった。
伊織「そもそも納豆以外生産できなかったそうよ。原因はわからないけど……」
この国の住民はなにを思って腐った豆を作っていたのか。
俺には推し量ることが出来なかった。
58 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:27:03.86 ID:vvsKt5Jb0
P「ちょっと休憩しようか」
日が落ちたところで俺は提案した。
比較的豆の少ない場所を選んで駐車する。
中央に近づくに連れて標識が訛っていくのが面白かった。
半ばからへし折れた青い案内標識によれば【ミドまであんどぅ200kmダッペェヤ】との事だ。
亜美「ゴハンにしようかー」
伊織「そうね、恐らく夜明け前には着くから今の内に休んでおきましょう」
車外は夜でも凄まじい熱気を放っているが、スーツの中は快適そのものだ。
脱いだ瞬間に思い知った。
P「あっつ!」
春香「うわ……、ひどい臭い……」
窓を閉め切っているのに納豆の匂いは車内を侵食していた。
P「チクショウ……、イバラキめ……」
息を止めてレーションを口に放り込むと、素早くメットを被りなおした。
水分補給はスーツを着たままでも出来たのでそこは問題なかった。
60 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:36:56.41 ID:vvsKt5Jb0
ぼんやりとシートにもたれかかってせわしなく動くワイパーを眺めていると後ろから奇妙な声が聞こえた。
亜美「う……うぅ……」
伊織「ちょ、ちょっと!? どうしたのよ!」
P「どうした!」
振り返ると亜美が頭を抱えて苦しんでいた。
春香「大丈夫!?」
春香が後部座席のドアを開けると亜美が外に転がり出た。
亜美「バババババッバババッバババアババッババッバ」
P「亜美!」
見る間に亜美のスーツが膨らんでいく。
伊織「まさか……、ゾンビ化したの!?」
P「ゾンビ化!? どういうことだ!」
伊織「長時間イバラキの空気を吸うと、肺に納豆菌が入り込んでナットウゾンビになってしまうの!」
P「なんだって!?」
61 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:42:16.83 ID:vvsKt5Jb0
亜美「ウガアアアアア!!!」
咆哮を上げながら亜美が素手でスーツを引き裂いた。
50口径の弾丸も受け止めるスーツをだ。
伊織「で、でもこんな短時間で発症するだなんて……」
狼狽する俺たちを尻目に亜美はゆっくりと立ち上がった。
ぶるるる~ん。
P「な、な……」
俺は目を見開いた。
服を突き破らんばかりに実った豊乳が誇示するように動きまくる。
焦点を失った亜美の目が赤く光った。
64 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:45:19.02 ID:vvsKt5Jb0
P「どういうことなんだ!」
悲鳴を上げて後ずさると車にぶつかった。
伊織「イソフラボンのせいかもしれないわね……」
春香「イソフラボン?」
伊織「ええ、大豆に含まれる成分で豊胸効果があるそうよ」
P「それにしたってこんな一瞬で……」
なにごとも限度というものがある。
H96はあるだろうその巨砲に俺は萎縮した。
65 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:46:52.47 ID:vvsKt5Jb0
亜美「ナナナナナナナナナナ」
春香「ひぃっ!」
亜美が奇声を上げて春香は怯えた。
全身を奇妙にくねらせてやたらとセクシーだ。
P「く……、どうすれば……」
伊織「まかせなさい!」
力強くこたえて伊織が前に出た。
66 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:52:05.64 ID:vvsKt5Jb0
構えた右手には無骨な銃器が握られ、銃口は亜美を捕らえている。
P「ちょ……」
止める間もなく引き金が引かれた。
とっさに目を伏せる。
だがいつまで経っても銃声は聞こえてこなかった。
P「……あれ?」
亜美「………………」
亜美は気絶しているだけだった。
見る間に胸は萎み、元のサイズに戻っていく。
P「いや、まだわからないな」
確認しようと思い腕を伸ばすと、春香と伊織に尻を蹴られた。
68 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 00:56:59.75 ID:vvsKt5Jb0
P「一体なにをしたんだ?」
伊織「液体窒素よ。納豆菌の繁殖には一定の温度が必要だから、これで活性化を抑えたの」
金属製の水鉄砲からは白い冷気が漏れていた。
噴射口の周りにはゴテゴテっとしたパーツがついていて、凍結を防いでるらしい。
春香「だからこんなに硬いのかー」
よく見れば亜美はカチカチに凍って鼻の穴は冷たい納豆で一杯だ。
P「早くミトを壊滅させないとな……」
粘つく空気に辟易しながら俺は呟いた。
69 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:02:15.04 ID:vvsKt5Jb0
休息もそこそこに車を走らせる。
ときおり後部座席から亜美の呻き声が聞こえたが、その都度伊織が凍らせていた。
春香「あ……」
先に気がついたのは春香だった。
木材と藁で出来た25階建てのビルが呪いの元凶だ。
俺たちは無言で車を降りた。
夜は深く暁は遠い。
虫の音も星明りも見えないほどに真っ暗だ。
それなのに
P「光ってるな……」
建物自体がぼやっと燐光を放っていた。
恐らく発酵する段階でなんらかの呪術的な作用があるのだろう。
県庁は強い熱源のようで、向かい合うとスーツを着ていても感じとれるほど暑かった。
70 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:07:42.30 ID:vvsKt5Jb0
伊織「あれが諸悪の根源ね。さっさと片付けちゃいましょう」
伊織がトランクからテキパキと武器を取り出す。
その時だ。
巻き藁の中から人影が飛び出してきた。
ゾンビ「ナナナナナナナナナ!!」
P「うわぁ!」
飛び退いて避けると、人影は倒れてべしゃりと野菜が潰れたような音がした。
納豆の服を着ているみたいで、足跡からは糸が引いている。
71 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:11:28.71 ID:vvsKt5Jb0
P「伊織! 武器を!」
伊織「ほら! さっさと倒しちゃいなさい!」
さっき使っていたのとは少々形は違うが基本は一緒だろう。
適当にアタリをつけてトリガーを引くと
ズバババババババ!!
破壊的な効果音と共に液体が噴き出した。
ゾンビ「ウギョオオオオオオ!!」
悲鳴を上げてゾンビが倒れた。
春香「や、やりましたか?」
P「バカ! そのセリフは……」
叱責は驚愕で途切れた。
76 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:22:04.23 ID:vvsKt5Jb0
ゾンB「ナナナナナナナナ!」
ゾンC「ナナナナナナナナ!」
ゾンD「ナナナナナナナナ!」
P「まだ出るのか!」
新たに出現した三体のゾンビが絡み合うようにして襲い掛かってくる。
油断した。
ここはイバラキなのだ。
ゾンビの100や200は覚悟してしかるべきなのに……!
後悔しても遅い。
ゾンビは信じられないほど機敏な動きを見せると、
P「うわっ……!」
縮こまった俺を無視して倒れた仲間に群がった。
春香「え?」
79 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:26:19.51 ID:vvsKt5Jb0
伊織「その銃はカラシと極上のタレを併せた特性エキスを撃ちだすのよ」
P「そ、そうか! コイツラは普段そのままでしか食わないから……!」
ゾンB「ウマイ、カユイ……」
涙を流しながら貪り食っている。
考えてみれば哀れなものだ。
イバラキ人は常に貧窮していて、口にできるものは納豆と水だけなのだ。
彼らに罪はない。
政治と貧乏が悪いのだ。
俺は民主党への怒りを再燃させた。
80 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:27:00.00 ID:MDFk2+tWO
あずささんと千早の見分けが付きにくくなるな、と言おうと思ったら何か超展開してた
83 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:29:43.80 ID:vvsKt5Jb0
春香「味噌汁が出来ました!」
P「でかしたぞ!」
大鍋一杯の味噌汁が到着した。
俺は手近な腐れ豆を叩き、刻んで鍋に入れた。
江戸時代まではご飯にかけるよりも一般的な食べ方だったそうだ。
ゾンC「オ、オオオオ……」
フラフラと鍋に群がりだしたゾンビは20を越えていた。
86 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:32:24.82 ID:bC0LRqwg0
炊き出しみたいになってんぞ!
87 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:33:35.78 ID:vvsKt5Jb0
伊織「今よ! かき混ぜて!」
P「まかせろ!」
軽く味噌汁で湿らせた箸を集団に突っ込んで撹拌する。
P「うおおおおおおおおおお!!!」
味噌汁に含まれる水分、塩分、それに温度が
フラクタンという成分を不安定にして余分な糸を作りにくくするのだ。
春香「プロデューサーさん! 行きますよ!」
P「おう!」
春香が特性エキスを混ぜ込むと、納豆はふんわりとしてゾンビの動きが鈍くなっていく。
伊織「もっとよ! もっと!」
P「ふんぬううううううううううう!!」
88 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:38:12.94 ID:vvsKt5Jb0
腕が棒になるまでかき混ぜると、納豆はクリーム状に変化した。
ゾンビはもはや指一つ動かせない。
ゾンD「オオ、オオオ……」
だがその表情はどこか満足気だった。
P「ふぅ……、危なかったぜ……」
疲れきった俺は腕をだらりと下げて呟いた。
しかし県庁まではまだ数kmはあるのにこの有様とは。
中に入ったらどうなってしまうのだろうか?
俺は納豆犬や納豆植物などに襲われる姿を想像して体を震わせた。
グリーンハーブならぬナットウハーブで体力を回復するのがとても嫌だったからだ。
P「そうは思わないか?」
春香「え? でも美味しいですよ。納豆」
口の周りを糸だらけにして春香が爆弾発言をした。
89 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 01:42:10.90 ID:fQn1zaveP
納豆は美味しいから仕方ないね
90 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:43:04.86 ID:vvsKt5Jb0
P「バカ! あんなくっせーもん食えるか!」
春香「なに言ってるんですか! 納豆は日本人の食文化に深く根ざした伝統食品ですよ!」
P「お前は脳まで納豆に侵食されているんだ!」
伊織「ちょっと! そんなことよりなにスーツ脱いでるのよ!」
P・春香「「あ」」
気がついたときには手遅れだった。
春香「ナナナナナナナナ」
春香の全身を糸が覆い繭を作り出す。
P「やばいぞ! このままじゃ羽化してしまう!」
手持ちの銃は残弾が空だ。
伊織「まったくもう!」
ここ一番に定評のある伊織が新しい銃を構えた。
よかった、これで春香も無事に帰れる。
そう思っていた。
91 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 01:43:21.66 ID:Bgq0XIzoP
>>P「ふんぬううううううううううう!!」
恋姫のアイツ思い出した
92 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:46:42.45 ID:vvsKt5Jb0
ズドオオオオン!!
春香「ぐぎゃああああああ!!」
烈火の炎が春香を包み込む。
呼吸が出来ないのか、口の周りを抑えながら苦しそうに歩き回った。
伊織「しまった! 間違えたわ!」
P「なんだ、うっかりしてるなぁ」
P・伊織「「ワハハハハハ」」
二人で笑っていると、春香が崩れ落ちた。
幸い本体は無事だった。
事務所のスペアボディに取り付ければ問題ないだろう。
93 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 01:47:27.40 ID:fW2gzCWA0
リボンは無事だったか、よかった……
94 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:48:26.09 ID:umMYOYdJ0
春香・・・無事でよかったナー
95 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:49:14.50 ID:HD6lGkZG0
おまえらwww
96 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 01:49:46.53 ID:N0wfHz+R0
くるってやがる
97 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:50:36.78 ID:vvsKt5Jb0
P「しかしいつの間にか二人になってしまったな」
伊織「ええ、イバラキは本当に恐ろしいところだっぺ」
P「ん?」
伊織「え?」
P「伊織……、今……」
伊織「あんれー! なんっちゅうごどだっぺおんもうづっちまったようだぁ!」
なんということだ!
ついに伊織にまでイバラキの呪いが!
もはや何を言っているのかさっぱりわからない。
困惑した俺たちは華麗に真家みたまおどりを踊った。
98 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 01:51:28.50 ID:jhUN1Lmn0
一体何が起こっているというんだ…
99 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 01:56:47.18 ID:vvsKt5Jb0
P「俺たちはここまでなのか……」
うなだれていると伊織が最後の力を振り絞って何かを手渡してきた。
伊織「こ、こんれを……」
P「これは……?」
銃のグリップ部分を取り外したような見た目だ。
スライドもマガジンもなく、そもそも全体がプラスチックで出来ている。
おもちゃなのか武器なのか判別に困る程度に中途半端な重さだった。
伊織「ソ……ル……」
その言葉を最後に伊織は倒れた。
P「ソル……?」
ソル。そる。剃る?
P「まさか剃毛してくれということじゃないよな……」
どこを剃るのか。それが問題だ。
101 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:04:19.34 ID:vvsKt5Jb0
P「もしやこれは高性能なカミソリなのかもしれないな」
とてもそうは見えないけど。
適当にいじり倒していると、透明なカバーが起き上がった。
カバーの中央には照準があり、隠された部分にはスイッチが二つ。
P「んー……?」
試しに青いスイッチを押すと、赤い光が出て伊織の背中にポイントされた。
俺は、なんだか、ものすごく嫌な予感がした。
そもそも今際の際に「陰毛を剃ってくれ」とは言わないだろう。小鳥さんじゃあるまいし。
P「そこに気がつくとは……、やはり俺スゴイ、かっこいい」
誰も褒めてくれないので自画自賛しながら装置を調べる。
となればこれは武器なのだろう。
県庁に向けて照準を合わせる。
念のために姿勢を低くして、もう一つのスイッチを押した。
102 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:08:55.80 ID:vvsKt5Jb0
カッキン!
妙に硬いスイッチは押し込むと金属質な音を立てた。
1秒。
2秒。
3秒、数えて何も起きないので拍子抜けした。
P「あれ? なにも起きないじゃないか」
文句を言いながら立ち上がろうとして
ズカッ!!!!!!!
腰を抜かした。
103 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/08/09(木) 02:09:08.46 ID:fW2gzCWA0
わけがわからん
105 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:14:30.29 ID:vvsKt5Jb0
天を裂き、大気を割り開いて巨大な光の柱が県庁に突き立った。
眩しくて目が開けられない。
爆風が舞い上がり、地面にしがみ付いていないと飛ばされそうだ。
跳ね上がるほどの震動に平衡感覚を失い、轟音で鼓膜が一瞬バカになった。
全てが収まるのにどれほどの時間が経ったのだろうか。
恐る恐る立ち上がった俺は目を疑った。
県庁があった場所には大穴が開き、黒く焦げた豆が煙を上げている。
あれほどあった巻き藁は全て吹き飛んで跡形もなくなっていた。
P「そうか……、SOL、か」
Satellite in Orbital Laser-weapon。
静止衛星型レーザー兵器のことだ。
上空数千kmに位置する軍事衛星からの照射はミト県庁周囲数kmを一瞬で消滅させた。
人類の叡智と破滅を象徴するかのような光景に、俺は言葉もなく立ちすくんでいた。
108 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:19:33.83 ID:vvsKt5Jb0
納豆の呪いが解けると、ゾンビは一般的な藁の服を着たイバラキ人に戻った。
話に寄れば一部の呪術士が暴走したそうで、こちらが恐縮するくらいに感謝されてしまった。
大量の納豆(お土産)と亜美と伊織と春香の本体を車に積み込んで、俺は事務所に向けて車を走らせた。
P「また納豆に挑戦してみるか」
匂いも慣れればさほど気にならなくなってきた。
食わず嫌いはよくないよな。
東の空がうっすらと白み始め、俺は目を細めた。
109 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:23:29.62 ID:XuDjkQJA0
AKIRAであったな
110 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:24:40.27 ID:vvsKt5Jb0
真美「うぉぉぉ……」
後部座席を見た真美が変な声を出した。
P「あんまり見ると鼻から納豆が出るぞ」
俺が冗談を飛ばすと、真美は背筋を伸ばして前を見た。
亜美と伊織は水無瀬財閥のヘリで緊急搬送された。
もっとも深刻な状態ではないようで、ほとんど検査入院みたいなものだ。
真美「大変だったみたいだね」
P「まぁな。危うく全滅するところだったよ」
横目で見れば青い果実がほんのり実っていた。
P「うんうん……」
達成感を感じて数度頷くと、欠伸が出た。
112 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:31:09.64 ID:vvsKt5Jb0
P「ただいま~」
真美「いまいま~」
小鳥「おかえりなさい、ご苦労様でした」
小鳥さんの胸も事務服を突き上げて喜んでいる。
P「いやー、よかったよかった」
小鳥さんに春香を渡してソファーに深く沈み込んだ。
千早「………………」
千早は絶望した表情で床を見つめていた。
こうして全てが終わった。
春香は新しい体に馴染むまで普段よりも良く転び、千早はプロボクサーになった。
亜美は納豆アレルギーになって、真美はそれを治すために医者を目指し始めた。
伊織はイントネーションがおかしいままなので地方アイドルとして活躍中で、
小鳥さんは相変わらず独身だった。
そして俺は納豆の旨さに開眼し、毎日食い続けた結果、
血液がサラサラになりすぎて心臓が爆発して死んだ。
おしまい
117 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/09(木) 02:33:39.68 ID:D2g4zghj0
貴様の罪は重い
乙
引用元:P「妖怪チチシボミ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344432641/
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[ 2012/08/09 22:31 ]
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