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2012 06/30

伊織「ミュージック・アワー」



1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/06/29(金) 02:33:33.09 ID:ncjRjE8r0


竜宮小町結成から1年後の夏。

竜宮小町も765プロの他のアイドル達も今では休みがないくらい忙しくなったのに、なんで未だにエレベーターが直らないのよ!
まったく……このスーパーアイドル伊織ちゃんに無駄な運動させるなんて許せないわ。
でも、本当は事務所に来る必要は無かったのに来ちゃったんだから今日だけは許してあげる。

それならなんで事務所に来たかって?
それは……その……あいつの顔が見たかったから……




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4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:34:53.69 ID:ncjRjE8r0


「あれ? おはよう伊織。今日って直接テレビ局じゃなかったっけ?」

「は、春香!? 特に用は無いけど……なんとなくよ」

「あ、そっか。……ごめんね伊織、今日はちょっとだけプロデューサー借りていかなきゃいけないんだ」

「これから収録? 行ってらっしゃい。……って別に借りるとか借りないとか私には関係ないわよ!」

「ふふ、今日から新番組でしょ? 頑張ってね。行ってきまーす」

たぶん春香には私の気持ちがバレてる……

そうよね。去年とはもう違うんだから、あいつだって毎日いろんなところ飛び回ってるんだもん。いつも事務所に居るわけないわよね。
事務所に行けばあいつといられる! ……なんて浮かれてた自分がバカみたい。




6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:36:58.93 ID:ncjRjE8r0


ダメダメ! だからってこんな顔あいつに見せられないわ。もう事務所の入り口だし、笑顔で行かないと。扉を力強く開けて、最高の挨拶で入ってやるわ!
せーのっ……あれ? なんで扉が勝手に開くのよ。これじゃドアノブに込めた力で転んじゃうじゃない! 足も前に出してるし踏ん張れない。思わず叫んでしまった。

「きゃあ!?」

「おっと」

……痛くない。 なんだか柔らかいような硬いようなものに抱きしめられた。

これってあいつの匂いじゃない。いつものわかるかわからないかくらいの香水の香り。
嫌味のない、いつまでも近くに居たいような……




7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:38:29.07 ID:ncjRjE8r0


「大丈夫か伊織?」

「な、何すんのよ!? 離れなさいよ変態! ド変態!」

「ごめんごめん。怪我はないか?」

「なんともないわ。そんなことより開けるなら開けるって言いなさいよね!」

「悪かったって。あれ、なんで伊織は事務所に来たんだ? 今日は会議も無いし、そのままテレビ局に行って良かったんだぞ?」

「そ、そんなの私の勝手でしょ! それより早く行ってあげなさいよ。春香待ってるわよ」

「そうだった。行ってきます」

「はいはい。行ってらっしゃい」


やっぱり「ありがとう」が言えなかった。




8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:39:03.72 ID:lU1Y+X/F0


きーみがむーねをこがすーから
なつがっねっつをーおびてーくー




11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:40:50.76 ID:ncjRjE8r0


急いで階段を下りていくプロデューサーを見送る。

はぁ……どうしてあんなふうに言っちゃうんだろう。
あんなに近くに……というか、抱きしめられるなんて普段ならありえないのに。嬉しかったのに……

こんな所でブルーになってても仕方ないわよね。さっさと中で涼もう。

「おはよう。って誰も居ないわよね」

「伊織ちゃん……あたしは居るわよ……」

「あら、おはよう小鳥。別に忘れてたってわけじゃないのよ?」

「ひどいぴよ……」




12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:42:02.07 ID:ncjRjE8r0


落ち込んでる小鳥を放置してソファに座る。

去年直したクーラーもちゃんと動いてるみたいね。
懐かしいな……あの頃はまだ仕事も少なくて、いつもみんなと一緒だったっけ。
竜宮小町を結成してからは、律子が専属のプロデューサーとして頑張ってくれている。
今日はあずさに付いて行ってるけどね。

その後のライブではいろいろあったけど、あれからみんなの仕事も増えていった。
仕事が増えればトップアイドルにも近づける。

もちろんプロデューサーも忙しくなった。
あいつに会えないのは寂しいけど、これは良いことなの。

だから次の仕事も頑張らないと。




14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:44:00.82 ID:ncjRjE8r0


なんて考えてる間にもう13時過ぎてるじゃない。
そういえば、あの頃はいつもこの時間にラジオを聞いてたわね。
まだやってるのかしら。

「伊織ちゃん、何か飲む?」

「えーっと、じゃあ紅茶入れてくれるかしら?」

「わかったわ」

ラジオを付ける前に、給湯室へ向かう小鳥に一応聞いてみる。

「小鳥ー、ラジオつけても良い?」

「構わないわよー」

ダメって言っても聞くつもりだったんだけどね。




15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:46:19.93 ID:ncjRjE8r0


つまみを回してチューニングして……

『ザーザー……にお送りしてます、ミュージック・アワー。この番組では、素敵な恋のエピソードと一緒にみんなのリクエストをお待ちしています。では、次のお便りです。』

「はいどうぞ。あら、この番組まだやってるのね」

「ありがと。これっていつからやってるの?」

「そうね、私が学生の頃にはやってたわよ」

「ということは少なくとも10年前からやってるのね」

「うう……あまり計算しないで……」

「かなりの長寿番組じゃない」

「たぶんアレのせいじゃないかしら。ほら、この番組に出した手紙が読まれると恋が叶うっていう」

「そんな噂もあったわね」

「伊織ちゃんもそれ目当てで聞いてたんじゃないの?」

「ち、違うわよ! 絶対違うから!」




17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:48:17.28 ID:ncjRjE8r0


まさか小鳥にもバレてるの!?
きっと大丈夫。普段妄想しかしてない小鳥にバレてるなんてありえないわ。

でもそんなに昔からやってる番組だったのね。
噂につられて手紙送ってみたんだけど、あれからすぐ忙しくなったから私が書いた手紙が読まれたのかわからないのよね。
もしも噂が本当なら読まれなかったんだろうけど。

だってまだ叶ってないんだし……

『では、tamaさんからのリクエスト。Buzyの鯨ですどうぞ』

今日の仕事は新番組の収録だし、もう一度台本チェックしたほうがいいわね。




18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:50:34.53 ID:ncjRjE8r0


そろそろテレビ局に向かわないと。

「小鳥、タクシー呼んでもらっていいかしら?」

「もうそんな時間? ちょっと待っててね」

「ただ今戻りました」

え? なんであいつが戻ってきたの?

「あら、プロデューサーさんお帰りなさい。春香ちゃんのお仕事終わったんですか?」

「まだなんですけど、休憩中に『今日から新番組で緊張してるだろうし、伊織の所に行ってあげてください』って言われちゃって」

春香……ありがとう。今度またゴージャスセレブプリン差し入れするわ。




19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:51:57.59 ID:ncjRjE8r0


「そうだったんですか。それじゃあ伊織ちゃんはプロデューサーさんに送ってもらってね」

「仕方ないわね。せっかく春香が言ってくれたのなら従うしかないわ」

「そろそろ時間だろ? 車で待ってるよ」

台本を片付けて、私もすぐに車へ向かう。

「行ってらっしゃい伊織ちゃん。頑張ってね!」

「まかせなさい!」




23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:54:18.70 ID:ncjRjE8r0


収録は順調に終わった。

初めてのクイズ番組で緊張してたけど、本番が始まれば意外となんとかなるものなのよね。

「お疲れ様。新番組でこれだけサクサク進むなんてさすがは伊織だな」

「ふふん、当たり前じゃない。私を誰だと思ってるの?」

「スーパーアイドルの伊織ちゃん。だろ?」

「わかってるじゃない」

あいつに少し褒められるだけですごく嬉しい。
久しぶりだったからかしら?




25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:56:01.36 ID:ncjRjE8r0


「この後は何も予定入ってなかったよな?」

「ええ。家まで送ってちょうだい」

「了解」

車内にはさっき聞いてた番組が流れている。

『JOPG-FM、love upをキーステーションにお送りしていますミュージック・アワー。そろそろお別れの時間です』

「お、懐かしいなこの番組」

「知ってるの?」

「昔聞いてたからな。高校時代に流行ってたんだよ、手紙が読まれると恋が叶うって」

「へぇ……そうなんだ」

「俺も送ったんだぞ。先輩にすごく綺麗な人がいてな、その人と付き合うにはどうすればいいですかって。読まれなかったんだけどな」

ただの昔話なのに、その綺麗な先輩とやらに嫉妬してしまう自分が情けない……




26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 02:58:20.78 ID:ncjRjE8r0


『最後にここでおハガキを1通。ラジオネーム"恋するウサギ"ちゃんからですね』

「ゲッホゲッホ」

「おい伊織大丈夫か!?」

「だ、大丈夫よ……」

なんで今さら私の手紙が読まれてるの!?
もう1年以上前に出したものじゃない!

「恋するウサギちゃんなんて可愛い名前だな」

「そうね……」

『これ去年の日付になってるけど……ま、いっか。恋するウサギちゃん聞いてるかな? 聞いててくれると嬉しいんだけど』

『えー……最近、好きな人ができました。これが初恋だと思います。ですが、その人の前ではどうしても素直になれません。なぜ人を好きになるとこんなにも苦しいのでしょうか』

『ということですが、そうだなー……素直になれないのはね、心が君を急かして蹴飛ばしてるからなんだ。そんなに難しく考えないでシンプルにその人と向きあってごらん』




27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 03:00:13.89 ID:ncjRjE8r0


「ねえ」

「ん?」

「あんたはこれどう思う?」

「どう思うって好きな人の前で素直になれないってか?」

「そう」

「うーん……気持ちはわかるよ。俺も子供の頃は好きな子にちょっかいを出したりしてたし」

「そうなの?」

「ああ。好きだった子に『お前なんて嫌いだ』とか『お前は可愛くない』とかな。今思うとかなりひどいなこれ」

「……」

「でもな、もう少し大きくなった頃その子に謝ったんだ。そしたらその子は『仕方ないから許してあげる』って言ってくれたんだ」

「そんなに酷いこと言ったのに?」

「うん。だからもしも俺がそうやって言われたとしても、それを許してやろうなんて思ってるんだ。それはきっと不器用な子の愛情表現なんだって。俺も不器用だからさ」




28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 03:02:14.72 ID:ncjRjE8r0


『大好きだから踏み出せない。大好きだからこそ臆病になってるんだよね。でもせっかくの恋なんだ、その淡い恋を泳ぎ切ってみせてよ!』

『"恋するウサギ"ちゃん、少しは参考になったかな? これからもそんな可愛いハートを持ってる子を見守っていこうと思います。長時間にわたってお送りしてきましたミュージック・アワー。それではみなさんごきげんよう』

「「着いたぞ伊織。今日もお疲れ様」




29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 03:04:01.40 ID:ncjRjE8r0


そっか、そうなんだ。

まさかあんたから勇気を貰うなんて思ってもみなかったわ。
真面目にプロデューサーやってるあんたのことだから、私の気持ちを知ったらそれはもう困惑するんでしょうね。

でも、もう知らない。

ずっと迷ってた私の背中を押したのは誰でもないあんたなんだから。
噂が嘘でも本当でも、私のことで悩んで悩んで悩みまくればいいのよ。にひひっ。




30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 03:05:59.45 ID:ncjRjE8r0


「ねえ、プロデューサー」

「ん? どうした?」

「さっきの"恋するウサギ"ちゃん、私なの」

「……え?」

「それでね、私、ずっと前からあんたのことが……」




おわり




31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/06/29(金) 03:06:59.45 ID:ncjRjE8r0


キャラ崩壊じゃねえかとか読みにくいんだよとかあったと思います
短いものでしたがお付き合いありがとうございました
おやすみなさい




32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/29(金) 03:07:52.49 ID:50DhiQ640







引用元:伊織「ミュージック・アワー」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340904813/

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