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2013 09/06

小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season3 第三十一夜





93 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 22:54:24.98 ID:dWU7jMU1o



第三十一夜 神託


ほたる「では、そろそろ今日もアイドル百物語の……お時間です」
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茄子「さてさて、今日はどんなお話が聞けるのでしょうね」
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小梅「今日は……前回に続いて、芸能界のお話、かな」
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ほたる「また……どこか怖い場所が……?」

小梅「ううん……。今回はどこかに現れる変なものの話じゃ、ない」

茄子「と言いますと?」

小梅「今回お話してくれるのは服部瞳子さんだけど……。瞳子さんの昔の……知り合いのお話」

ほたる「なるほど……昔のお話なんですね」

小梅「うん。もう何年も前の……お話」

茄子「瞳子さんも芸能界は長いようですからね」

小梅「うん」

ほたる「いったいどんなお話なのでしょうか。では、服部瞳子さんのお話です。どうぞ」






前スレ
小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season 3 第三十夜
シリーズスレ
白坂小梅のラジオ百物語





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94 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 22:55:02.19 ID:dWU7jMU1o



服部瞳子(25)
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○一言質問
小梅「死んだ人を一人だけ呼び出してもらえるとしたら……誰を呼ぶ?」
瞳子「そうね……。ひばりさんかしらね。一度はお話してみたいわ」




95 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 22:56:35.71 ID:dWU7jMU1o



 こんにちは、小梅ちゃん。
 今日は……怪談、だったかしら。

 そうね……。
 怪談……。
 暑い日には、そんなものでひやりとするのもいいのかもね……。

 じゃあ……うん、今日は少し昔話をしましょうか。
 私が以前にデビューした頃の話を……。

 知っているかどうかわからないけれど、これでも、若い頃に一度デビューしたのよ。
 うまくはいかなかったけれど……。
 さすがに小梅ちゃんほど若くはなかったけれどね……。

 ともあれ、何年かがんばって、結局そのときは芽が出なかったのだけれど……。
 その頃の同期で仲の良い子がいてね。
 今日はその子の話。

 その子も、私と同じようにがんばってて……。
 でも、なかなか努力が実らなかった。




96 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 22:58:01.34 ID:dWU7jMU1o



 芸能界っていうのは面白いものよね。

 才能と努力。
 それに運。

 当人が持つそういったものに加えて、周囲の人たちの力やタイミングで、売れるかどうかがまるで変わってくるんだもの。

 たとえば私がこの年になり、そして、導いてくれる人と出会ったことで、ようやくいま、少しは名前が知れてきたように……。

 その子も、本当にずっとがんばっていて……。
 そして、不意に売れ始めたの。
 なにがきっかけだったのか、周りもわからなかったけど、とにかくどんどん仕事が増え始めた。

 私は正直嫉妬もあったけど、あの子ならと納得する気持ちや、仲の良い子が売れて喜ぶ気持ちのほうが強かったわ。

 だから、彼女の時間が空いたとき、お祝いに自分の部屋に招いたの。




97 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 22:59:37.21 ID:dWU7jMU1o



 ケーキなんて用意して、一通りお祝いをしたら……売れてなかった頃みたいに、二人で深夜まで話し込んだわ。
 まあ、当時も私は売れてなかったんだけど。

 布団に潜り込んで、電気を消してもまだ話を続けて……。
 そうしてね、彼女が言ったの。

『ねえ、ヒトミ。ヒトミも売れたくない?』

 ああ、もちろん私の名前はトウコなんだけど、その子は、ヒトミって呼んでたの。
 あだ名みたいなものね。

 私はそんな問いかけに笑いながら、もちろんあなたにあやかって売れたいものよ、と返した。

 すると、彼女は声を潜めて、こんな事を言ったわ。

『じゃあ……教えてあげるよ。どうしたら……成功できるか』

 どうするの? と私はふざけたように聞き返した。
 だって、そんなこと教えられるものではないもの。

 ところが、それから彼女は真剣な声で、とんでもないことを言い出したの。




98 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 23:00:53.34 ID:dWU7jMU1o



『猫だと少し小さいかな……。出来れば犬。子犬でもいいけど、出来るだけ大きいのがいい。そのほうが声が大きいから』

 最初はなにを言っているか、さっぱりわからなかったわ。

『先に殺しちゃうほうがいいね。死んで何日も経ってるのはだめだけど、その場で殺したのなら、ちゃんと聞こえるから』

 なにを言っているの、と私は震える声で尋ねた。
 彼女は、はっきりとこう言ったわ。

『ご神託の聞き方だよ』

 彼女によると、動物……出来れば大きめの動物の喉を切り裂くと、その……。
 ぱっくりと開いた傷口が『喋る』のだというの。

 未来の出来事や、自分がそのときどうしたらいいか、それを教えてくれるのだ、と。

『私はそれで……こうなったんだよ』

 私はなにも言えなかった。
 彼女もそれ以上は口を開かなかった。




99 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 23:02:20.24 ID:dWU7jMU1o



 彼女にしてみれば、ただ方法を教えてあげたって、それだけのことだったのかもしれないわね。

 その後、私はくすぶり続けたけれど、動物の喉を切り裂いたりすることはなかった。
 彼女はそれなりに売れていたはずなのに、突然芸能界から姿を消した。

 最後にかかってきた電話……。
 私の携帯の留守電に残された録音で、彼女はこう言っていたわ。

『ヒトミ。わかったんだ。動物じゃなくて、自分の体なら、もっとよく聞こえる。喉じゃなくて、体のどこかでいいんだよ!』

 嬉しげに、楽しげに、彼女は笑っていたっけ。


 風の噂では、彼女の引退の原因はリストカットをはじめとする自傷癖だったというわ……。




100 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 23:03:17.90 ID:dWU7jMU1o




ほたる「傷口が……喋る?」

茄子「死体を切り裂くと、それが未来を予言する……。なんとも……陰惨というか、不吉にしか思えないのですが……」

小梅「う、うん……。しかも自分の体の傷も……」

ほたる「精神のバランスが……?」

小梅「それは……わからない」

茄子「オカルト的には……予言の代償としての生贄……というところでしょうかね?」

小梅「うん……。でも、ただ殺して、喉を切り裂くと声が聞こえるって……。どうつながってるのかもわからないから……」

ほたる「うーん……。もし、予言が本当でも……。結局は不幸になっちゃってる気が……」

小梅「……うん。未来を知って、幸せになることは、あまりない。物語でも……」

茄子「そうですね。たいていは、よけい悪くなる気が……」

小梅「うん……。なにかから助かることもあるにはあるけど……」

ほたる「私は……良い未来でも悪い未来でも知りたくないかな……」

茄子「ふふ。私もそうですね。さて、次のコーナーでは、件の伝説なども含めて、予言にまつわるお話を……」


 第三十一夜 終




101 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/09/05(木) 23:03:50.07 ID:dWU7jMU1o


本日は以上です。
瞳子さんは幸せにしたくなる。




102以下、新鯖からお送りいたします [sage] :2013/09/05(木) 23:06:17.60 ID:T4aA7k900


うわぁ……
でもそれで売れるならって、やる奴もいるだろうな……




103以下、新鯖からお送りいたします [sage] :2013/09/05(木) 23:38:01.88 ID:R9r/CkAlO


こういう感じの執着みたいな信仰的な話好きだわ
いつも乙



転載元:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377432933/


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一種の願掛けみたいなもんなのか…
でも、こういうのの逸話って終わりが良かった試しが無い
[ 2013/09/06 06:00 ] [ 編集 ]
傷口が喋るってのがまるで人面瘡みたいだ
[ 2013/09/06 13:10 ] [ 編集 ]
何をすればいいかが完全にわかってるっていうのは、人生に飽きるか知らないことが恐くなって自滅するかのどっちかが多いな
[ 2013/09/06 16:02 ] [ 編集 ]
家畜を生贄にする呪術とも違うんだろうけど、
根本は似たようなもんなのかな?
ただ、こういう願望の叶え方って最後はロクな目に遭わないよね
[ 2013/09/06 21:24 ] [ 編集 ]
まずどこ情報だったんよーっていう。
何関係のモノか判んないのがスゴイなこれ。

つーか、最終的には「喉に近い方が声が大きい♪」とか言いだして
信託聞き出すよりも聞きたいだけになって腕・肩・喉―――
[ 2013/09/08 03:35 ] [ 編集 ]
そして額に傷をつけた際に第三の眼が開眼。
千代子になり変わり保介と共にさまざまな不思議を体験する事に…
[ 2013/09/09 13:34 ] [ 編集 ]
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