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2013 08/26

小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season3 第二十六夜




1 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:15:33.79 ID:+ghuoRsjo




第二十六夜 百物語


小梅「白坂小梅の……ラジオ百物語」

ほたる「第三シーズンっ!……が、がんばりました」

茄子「はい。みなさん、こんばんは。白坂小梅のラジオ百物語、第三シーズンの始まりです」

白坂小梅(13)
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白菊ほたる(13)
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鷹富士茄子(20)
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前スレ
小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season 2 第二十五夜
シリーズスレ
白坂小梅のラジオ百物語





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3 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:20:50.31 ID:+ghuoRsjo




小梅「第三シーズン……。なんだか、ずいぶんやってきた感じ……」

茄子「そうですねえ。でも、ここで失速してはいけませんよね」

ほたる「……ええ、がんばらないと」

小梅「あんまりがんばるのも……。怪談、だから……」

ほたる「あ、そ、そうですね……」

茄子「ふふっ。でも、いろいろと楽しめるといいですね。今シーズンも」

小梅「う、うん」

ほたる「そういえば……前回のシーズンは偶数シーズンということで、ゲストさんが多めでしたが……」

茄子「奇数シーズンの今回は私たちがメインとなりますね」

小梅「……三人で……ゆっくり? さっぱり? うぅん?」

茄子「怪談ですし、しっとり、ですかね」

小梅「あ、そ、それ……」

ほたる「なるほど……。しっとり……」



4 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:21:40.34 ID:+ghuoRsjo




茄子「さて、第二シーズンの感想のメールなどたくさんいただいておりますが、それらを読むのは後回しにしまして……」

小梅「うん、今日は……アイドル百物語から。実は……今回は百物語についてのお話」

ほたる「へえ……」

茄子「百物語についてですか……」

小梅「うん。実際に……百物語をした経験があるって……」

茄子「なにやら面白そうですね。一体どなたなんでしょうか?」

小梅「えと……柊志乃さん」

ほたる「それでは……柊志乃さんのお話、お聞きください」



5 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:22:33.36 ID:+ghuoRsjo


柊志乃(31)
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○一言質問
小梅「これまでで一番背筋が凍えた時は……?」
志乃「前日は新宿で飲んだはずなのに、起きたら静岡にいた時かしらね」



7 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:24:01.49 ID:+ghuoRsjo



 こんばんは……小梅ちゃん。
 いい夜ね。
 酔うにも、語るにも。

 うふふ……。
 いやだ、プロデューサー。

 さすがに小梅ちゃんにワインを勧めたりはしないわよ。
 それは、もっと先のお楽しみ。

 さてと……怪談だったわよね。

 それなら、ちょうどいい話があるわ。
 私が、昔……そう、怪談会に参加した時のお話。

 いまから、七年……いえ、八年だったかしら。
 それくらい前のこと
 蒸し暑い夏の夜に、なにか変わったことで夜明かしをしようと、そう決めた一団があったのよ。

 その中に、私もいたの。

 ……と言っても、私はその頃から、ゆっくりワインが味わえればそれでいいと思っていたけれど。
 ただ、ノリがよくて、さらには実行力のある人がその中にいたのね。
 たしか、どこかの社長だとか言ってたかしら。



8 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:26:43.31 ID:+ghuoRsjo




 私がワインを味わってる間に、あれよあれよという間に話ができあがっていたの。
 その人が後援しているとある劇団の練習場で百物語を開催しようって、そんな話がね。

 月も見えない曇り空の蒸した空気の中、私たちは、その練習場とやらに移動したわ。
 薄暗い中で見る限り、ただだだっ広いだけの場所に見えたわね。

 そこで、私たちは怪談を始めたの。
 そう……百物語をね。

 小梅ちゃんのことだから……百物語の本当の作法を知っているかしら?

 ええ、そう……ろうそくを立てるのではないやつね。
 行灯に青い覆いをして、百本の灯心を入れる。
 そうして、話が一つ終わるごとに灯心を引き抜いていく……。

 それが、昔々の百物語の作法。

 本当はいくつか部屋を隔てたところに行灯を置いて、わずかな青白い灯りの中話すものらしいけれど……。
 さすがにそこまではできないから、劇団の小道具の行灯を練習場の端において、私たちは逆の隅に集まったわ。



9 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:28:39.26 ID:+ghuoRsjo



 それでも、行灯の光しかない中に飲み仲間の青白い顔が浮かぶっていうのは、一種幻想的な光景だったわね。

 話が終わるごとに行灯から灯心を引き抜きに行く。
 たったそれだけのことなのに、暗い中を一人進んで行くのは心細いものよ。

 たとえ、後ろに友人たちがいると知っていても……。
 いえ、知っているからこそ、無様なことはできないし、余計に気が張っていたかもしれないわね。

 怪談話は進んでいったわ。
 まあ、みんな知っているようなものやら、ちょっとそれは怪談なのかって思うようなものまで混じり初めて……。

 それでも、空気というのかしら。
 私たちはひたすらに話を進めていった。

 そういえば、百の話を終えると、怪異が現れるというね、とふと漏らす人がいたわ。
 そうらしいわね、という賛同の声。

 いくつか話をすると、今度はまた別の人が、百の灯りを消したら、現れるものはなにか決まっているのかい? と尋ねる。
 さあ、どうなのかな、曖昧な声がそう応じる。



10 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:30:07.32 ID:+ghuoRsjo



 そんなことが何度かあって、おい、どうした、と誰かが言ったのね。
 なにを気にしてるんだ、と。

 顔を見あわせて黙り込む一同。

 そうして、しばらくして、何人かが口をそろえて言い出したのよ。
 行灯の上に……なにかいるってね。

 私たちの視線はもちろん、行灯に向かった。

 そうしたらね……。
 いたのよ。

 たしかに行灯の上に、なにかの影があるの。
 慌てて、ここをよく知っている件の社長さんが、灯りをつけたの。
 行灯じゃない、蛍光灯をね。

 そこでぱっと消えていたら、それはそれで面白かったんでしょうけれど……。

 残念なことに、それは消えていなかった。
 それどころか、はっきりと見えてしまったのよ。

 青い光を発する行灯の上、そこに、女性がいるのが。



11 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:31:58.90 ID:+ghuoRsjo



 いいえ、浮いていたのではないの。
 ああ、いえ……。
 浮いているとも言えるのかしら?

 それは、なにか帯のようなもので首をつっていたのよ。

 人が驚くと、どうなるか知っている?
 きっかけがあれば恐慌状態になるんでしょうけれど……。
 私たちの場合は、むしろ魂が抜けたようになってしまったわ。

 悲鳴を上げるでもなく、呆然とそれに近づいていったの。

 怖いとか不気味とか以前に、わけがわからないって気持ちが強かったのでしょうね。
 それが実在のものなのか、それとも、霊だとかそういう……まあ、変なものなのか、それもわからなかったから。

 だって……私たちが入ってきた時には当然そんなものはなかったし、百物語をしている最中に首を吊ることなんてできるものかしら?

 そうして、私たちはそれを見た。

 でもね、やっぱり顔って見られるものじゃないのよ。
 首を吊っているらしいこと、浴衣らしきものを着ているその体のラインからして女性であること。

 そこまでは判別しても、顔はなかなか見られない。



12 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:33:29.10 ID:+ghuoRsjo



 ところがね、大胆な人が……あるいは短気だったのか、緊張に耐えられなかったのか、そのあたりはわからないけれど……。
 とにもかくにも一人が顔を見たの。

 そうして、

『Kだ!』

 って彼は叫んだわ。

 私たちはその声に、揃ってその首をくくった女性の顔を見た。

 苦しそうに歪み切った、鬱血した顔。
 でも、それは、たしかに飲み仲間のKそのもので……。

 そして、そのKは、その場にいたの。

 だから、おぞましい縊死者の顔に集まっていたみんなの視線は、一斉に、そこに立つはずのKの顔に移ったわ。

 そこに、Kはいた。

 真っ青な顔でね。
 けれど、たしかに生きた人間として。



13 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:34:25.59 ID:+ghuoRsjo



 そのことにみんなで驚いて、もう一度振り向いたら……。
 もう首を吊っている女は消えていたのよ。



 幻だったのか。
 みんなが百物語の雰囲気と暑さにやられてしまったのか。

 なんだったのかはわからないし、誰も語ろうとしなかった。

 もちろん、その後で百物語は続くことはなく……。
 それどころか、この夜のことを話題に出す人はいないくらいだった。

 でも……。
 それから、二年くらいしてからかしらね。

 人づてにある話を聞いたのは。


 Kが自殺したって。



14 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:35:37.72 ID:+ghuoRsjo



 え?
 首をくくったのかって?

 さあ……。そこまでは知らないわ。



15 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:36:29.04 ID:+ghuoRsjo




茄子「……不思議というか、なんというか……」

ほたる「不気味な話……ですね」

小梅「う、うん」

茄子「未来の自分を見たとも、あるいは、これを見てしまったから死を選んだとも取れるお話ですが……」

ほたる「真実は……わかりませんよね」

小梅「……でも、なにかは、あった……」

茄子「そうですね……。しかし、語り終えてもいないのに出現していたんですよね……?」

ほたる「百の物語が語られたら……という噂はありますが」

小梅「う、うん。百物語が降霊の儀式って考える人は……いる。でも、怪談話をしてるとそれだけで寄ってくるとも……言う」

茄子「実際の所はどうなんでしょうねえ……」

ほたる「ええと……果たして、どんなことが作用して、どんな結果を生み出すかはわかりませんが、次のコーナーでは、物語を語ることで……」


 第二十六夜 終



16 ◆E31EyGNamM [saga] :2013/08/25(日) 21:37:36.95 ID:+ghuoRsjo



 そんなわけで、第三シーズンスタートです。
 今回は、岡本綺堂の『百物語』あるいは、それの原話となった『首くくりの女』(宝暦頃の綺談随筆集に収録)を元にしたお話でした。
 古典的ですが、シーズンスタートには似合っていると考え、志乃さんに語ってもらいました。


転載元:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377432933/


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しかし夜に読むんじゃなかったよ、眠れそうにない
[ 2013/08/26 02:35 ] [ 編集 ]
あいかわらず本腰入れると怖い
ほのぼの…ほのぼのを…
[ 2013/08/26 02:41 ] [ 編集 ]
夏には合う背筋の凍る話だな
[ 2013/08/26 02:55 ] [ 編集 ]
寝れずにSS読み返してたら新シリーズきてた
相変わらずじっとりとした怖さがあるな
[ 2013/08/26 03:01 ] [ 編集 ]
盆明けにシーズン3・・・だと・・!?

言いだしっぺがKなのか?ってのもアヤフヤなんだよな。
にしても、新宿→起きたら静岡てw時間的にどんな移動手段だw
[ 2013/08/26 06:52 ] [ 編集 ]
これを待っていた
[ 2013/08/26 07:09 ] [ 編集 ]
公約通りにきてくれるとは!また楽しませていただきます!

>>24947
ムーンライトながらか大垣夜行でも乗ったのかねぇ……
[ 2013/08/26 07:41 ] [ 編集 ]
普通に怖かったわ…流石志乃さん
[ 2013/08/26 07:48 ] [ 編集 ]
岡本綺堂は『半七捕物帳』が有名だけど
伝奇小説も結構書いていて、今読んでも普通に面白いからオススメ

丁度昨日ふとこのシリーズの続きはまだかなぁと思ってたら、本当に来るとは…
[ 2013/08/26 10:44 ] [ 編集 ]
来てた。嬉しい。昔の作家さんは意外と怪談やら幻想譚やら書いてる人多いよね。
相変わらず怖いけど、この人の話はしっかりまとまってて、サラッと読めるから好きだ。
[ 2013/08/26 10:56 ] [ 編集 ]
こえぇ…
相変わらず、ここの話はホンットにこえぇ…
[ 2013/08/26 11:18 ] [ 編集 ]
Co組は相変わらずガチで怖い話だな。
Paだとちゃんみお回のようにギャグっぽくなるのに

志乃さん程じゃないが立川で飲んでて気付いたら池袋駅近くのゴミ集積場で寝てた事ならあったw
[ 2013/08/26 12:19 ] [ 編集 ]
待ってました!!(歓喜)
[ 2013/08/26 12:57 ] [ 編集 ]
おお、このシリーズ待ってたんだよ待望だよ。

百物語の最後では山ン本五郎左衛門(日本名。魔王)の話をするのが作法だとか。
[ 2013/08/26 15:42 ] [ 編集 ]
怖えええ……寒気がした
[ 2013/08/26 20:19 ] [ 編集 ]
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