2013
06/25
火
178 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:05:02.17 ID:4Xl8NO9No
第二十四夜 アンタじゃダメ
凛「それでは、今日もアイドル百物語のお時間となります」
加蓮「お、いい感じにすらっといったね」
凛「まあね」
奈緒「川島さんにナレーションの練習してもらったもんなー」
凛「なににやにやしてんの、奈緒」
奈緒「別にぃ」
茄子「本日もトライアドプリムスのじゃれ合いと共にお送りしておりますラジオ百物語ですが……」

凛「茄子さん?」
茄子「はい?」
凛「……ううん。なんでもない、続けて」
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179 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:07:19.36 ID:4Xl8NO9No
加蓮「負けた」
奈緒「負けたな」
凛「うっさい」
小梅「え、えっと……進める、ね」

加蓮「あ、ごめんね」
ほたる「今日はトライアドプリムスのゲスト最終回ということで……。三人のトリは奈緒さんが飾ってくれます」

奈緒「あ、う、うん」
加蓮「急に勢い無くさないでよ」
小梅「奈緒さんのお話は……とても不思議」
茄子「小梅ちゃんは既に聴かせてもらっているんですよね」
小梅「う、うん。楽しかった」
奈緒「うーん。当人としてはあんまり思い出したくない話ではあるんだけどな」
凛「ん。そんな話なんだ」
加蓮「なんか目撃しちゃったとか?」
180 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:08:27.15 ID:4Xl8NO9No
奈緒「いや、そういうのじゃないんだけど……。ね」
ほたる「……一体どんなお話なのでしょう」
小梅「な、奈緒さんのお話は小学生の頃のお話……なんだけど」
奈緒「実は去年まで忘れてたんだよな。たまたまふっと思い出したんだけど」
小梅「怪談では、実はよくあるパターン。子供の頃の……受け止めきれないくらい怖い記憶は……ふたをされちゃうことが、多い」
加蓮「へえ……」
凛「精神を安定させるような仕組みが自然と働くってわけだね」
小梅「う、うん」
ほたる「大きくなったら……思い出しても大丈夫、なんでしょうか」
小梅「た、たいていは」
奈緒「大人になったからこそ怖いのもあるけどな……」
茄子「なかなか興味深い話題ですが、奈緒さんのお話のほうが気になりますね」
小梅「うん……。では、奈緒さんのお話、聞いてください」
181 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:09:18.73 ID:4Xl8NO9No
182 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:10:33.93 ID:4Xl8NO9No
さて、アタシの話も、凛の話と同じく、小学校の頃の話。
ただ、凛と違うのは、アタシの場合は経験談だってことかな。
たしかあれは四年生の二学期だったと思う。
とある女の子が、アタシの学校に転校してきたんだ。
仮にこの子をSとでもしようか。
Sちゃんは、親の仕事の関係かなにかで転校を繰り返している子らしかった。
うちの学校になじむのも、アタシたち地元の人間の予想よりもずっと早かったよ。
慣れっこになっていたからかもしれないな。
ともあれ、色んな地方の話をおもしろおかしくしてくれるSちゃんは、クラスで受け入れられ、アタシ自身も結構仲良くなった。
そして、しばらくしてから、Sちゃんの家に招かれたんだ。
友達の家に遊びに行くのは珍しい事じゃなかったし、気軽にOKしたよ。
ただ、普段は複数人で遊びに行くことが多かったから、その日呼ばれてるのがアタシだけって聞いた時はちょっと驚いたかな。
でも、それを聞いたのは、Sちゃんと一緒の帰り道。
183 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:11:59.52 ID:4Xl8NO9No
アタシの家はSちゃんの家と学校の間にあったから、途中で寄って鞄だけ置いてきた後だった。
つまりは、もうSちゃんの家に向かっているところだったんだ。
二人きりだからっていまから断るのはSちゃんに悪い。
それに、初めて行く家だし、大勢で押しかけるよりは、一人で行ったほうがいいような気もする。
賑やかじゃないのはちょっと残念だけど、二人でおしゃべりしてればいいかって思って、アタシはそのままSちゃん家に向かったんだ。
Sちゃんの家は普通の家だった気がする。
ただ、記憶はそれほど定かじゃないけどね。
どうだろうな。
記憶に残らなかったってことは、家自体は変じゃなかったってことだと思う。
変なのはここからだ。
184 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:13:23.05 ID:4Xl8NO9No
家に着くと、Sちゃんのお母さんがいて、ケーキをごちそうしてくれた。
子供の舌にも、これは甘すぎるんじゃないかって思うようなケーキだったけど、せっかく出してくれたのに文句なんか言えないだろ?
ただ、それを食べ終えてから、妙に眠いんだ。
体育の授業があったわけでもないのに、こんなに眠いっておかしいななんて思いながら、アタシはなんとか目を開こうとしてた。
だって、せっかく家に呼んでもらって寝ちゃいましたじゃ、失礼すぎるもんな。
ところが、Sちゃんのお母さんは眠そうだから寝ていけって言うんだ。
布団を敷いてあるからって。
アタシが断ろうとすると、Sちゃんまでもが、眠いなら寝ていった方がいいって、しきりに勧めてくるんだよ。
二人の勢いに負けて、アタシは客間に敷かれた布団に入ったよ。
それがどうもおかしいという感覚はあったんだけど、眠気に勝てなくてさ。
布団に入った途端にアタシは意識を失ったんだけど……。
185 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:14:29.41 ID:4Xl8NO9No
ふっと目が覚めたんだ。
誰かに見られてる、っていう強烈な感覚と一緒にね。
目を開けちゃだめだ、って本能的に感じた。
だから、アタシはそのまま目を開かずに、ゆっくりと息をするよう意識しながら、身じろぎせずにいた。
そしたらさ、顔の近くに気配があるんだよ。
鼻息がかかるくらい近くに、誰かがいる気配が。
誰かが見てるんだ、って思ったね。
それも、ぴったりと顔をくっつけて、アタシを見てる奴がいるんだって。
アタシは内心恐怖に震えながら、表面にはそれを現さないよう、必死だったよ。
じぃっと見つめられてるって、わかってたからな。
それでも耐えきれず、アタシはうーん、って唸りながら、寝返りを打った。
なんとか、そのぴったり食いついてきてるやつから逃げたかったんだ。
すると、すいっと気配が遠ざかって、こんな声がした。
『こいつじゃダメだね』
『ダメなの、ママ』
Sちゃんのお母さんと、Sちゃんの声だった。
186 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:15:41.13 ID:4Xl8NO9No
『ダメだよ』
『残念だね』
『残念だ』
そうやって声は言い交わすと、最後に、低い声でこう言った。
『アンタじゃ、ダメだ』
明らかに、アタシに向けて、はっきりと。
そこから、まるっきり記憶がない。
そして、その当時のアタシはSちゃんの家に行ったという記憶さえ、忘れ果てていた。
いや、普通に次の日は学校に行っていたし、Sちゃんも学校に来てたよ。
だけど、もう前みたいに仲良くはしてなかったな。
Sちゃんも、他の子と仲良くしてるみたいだった。
187 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:16:56.81 ID:4Xl8NO9No
もしかしたら、他の子も家に連れて行くんじゃないか、そして……。
記憶があったならそんなことも考えたかもしれない。
でも、怖すぎたのかなんなのか、当時のアタシはそれを封印してしまっていて……。
結局、誰かに警告をしたりとかは出来なかったな。
なにしろ、冬休みが始まる前にSちゃんはまた転校して行っちゃったから。
もしかしたら……だけど、クラス中の『チェック』が済んだから転校して行ったのかもしれない。
はたして、なにが『ダメ』で、なにがよかったのか。
『ダメ』じゃなかったら、どうなっていたのか。どうするつもりだったのか。
アタシにはさっぱりわからないけど、それでも……。
『ダメ』って判断されてよかったと思うよ。
心の底から。
188 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:18:10.60 ID:4Xl8NO9No
加蓮「……なんだったんだろうね?」
凛「なにかを選別してた……ってのは間違いないよね。その……Sちゃんのお母さんが」
小梅「け、ケーキになにか混ぜて……眠らされて……」
奈緒「だろうなー。あそこまでするってことは、完全に計画的だよな」
ほたる「選ばれたら……なにかもっと恐ろしいことになっていますよね……」
茄子「時代的にどうかわかりませんが、他国の拉致というのも実際にあり得る話ですし、宗教的な暴走だとか、営利だとか、いろいろと考えられますね」
小梅「奈緒さんが……連れて行かれなくて……よかった」
奈緒「ほんとだよ」
加蓮「そうだね。この子ならいいって言われて、なにかされてたら、たまったもんじゃないよね」
凛「うん、本当によかった」
189 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:18:59.03 ID:4Xl8NO9No
奈緒「ただなー……」
茄子「なんですか?」
奈緒「いや、あのとき、あの台詞を言うってことは、アタシが起きてるのに気づいてたって思うんだよ」
ほたる「……そう、でしょうね」
奈緒「おかしいと思わないか?」
茄子「はい?」
凛「……確かにおかしいね。薬を盛っておいて、起きてることに慌てないのはおかしいと思う」
小梅「予定通りじゃなければ……焦る、かも」
加蓮「……あれ? ってことは、その程度で起きるとわかってる量しか、睡眠薬とかそういうのを入れなかった?」
茄子「……さらによくわからなくなってきますね」
190 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:19:37.15 ID:4Xl8NO9No
奈緒「うん、でもさ」
ほたる「はい」
奈緒「ともかく、あのお母さんが悪意の塊だってことだけは確信出来るよ。薬の量もそういう意図だろうなって、アタシは思う」
凛「……嫌な話」
奈緒「うん」
茄子「人の悪意というのは底なしなのでは無いかと、時に思わされますね。さて、そろそろ次のコーナーへ参りましょうか」
小梅「う、うん。次は人の狂気についてのお話を特集して……」
第二十四夜 終
191 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga] :2013/06/25(火) 00:20:33.29 ID:4Xl8NO9No
本日は以上です。
トライアドプリムス最後は気味の悪い話でした。
次回で第二シーズンも終わりですね。
192 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2013/06/25(火) 01:03:27.78 ID:lFhPO/17o
乙
こういう生身の悪意が一番嫌だな…
転載元:小梅「白坂小梅のラジオ百物語」 Season 2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370268734/
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370268734/
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22376
▼返信コメ
霊の話より怖い
[ 2013/06/25 03:17 ]
[ 編集 ]
22397
▼返信コメ
怖いな 某宗教関係で似た噂を聞いたことがある
この話については解らないけど、宗教に限って言えば狂信者が身近のどこに居るかわからないから迂闊に批判や悪口は言えない怖さがある
この話については解らないけど、宗教に限って言えば狂信者が身近のどこに居るかわからないから迂闊に批判や悪口は言えない怖さがある
[ 2013/06/25 08:44 ]
[ 編集 ]
22423
▼返信コメ
今までで読んだ中で唯一心拍数が上がって来たわ…
つーか、これ放送後に当時の同級生からメールかブログ※か何らかの形で
「あたしもあった!」が出る一方で、「俺もあった」は来ない予感
つーか、これ放送後に当時の同級生からメールかブログ※か何らかの形で
「あたしもあった!」が出る一方で、「俺もあった」は来ない予感
[ 2013/06/25 17:30 ]
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