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2012 11/23

美希「ハニーとプロデューサー」





1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 11:40:50.27 ID:WqT9Qbdi0


美希誕生日おめでとう!

ってことで、タイトル通り美希のssです。





2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 11:44:34.87 ID:WqT9Qbdi0


11月も半ばを過ぎ、暦の上ではもう冬と呼ばれる季節となった。
街角を通り抜ける木枯らしが、道行く人々に肌寒さを与えていく。

俺はいつもより早く事務所に着き、昨日終わらなかった仕事に取り掛かっていた。
いつも俺よりも先に来ているのは音無さんと律子の二人だけだったが、それでも今日の仕事は、あまり大勢には見せないでおきたかったのだ。

「おはようございまーす……あれ? 今日は早いですね、プロデューサーさん。お疲れ様です」
「ああ、おはようございます、音無さん。今日は少しやることが残ってたので、早めに来たんです」






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7>>5一応段落ごとに行間開けてるけどこれじゃ駄目かな:2012/11/23(金) 11:54:07.82 ID:WqT9Qbdi0


彼女には話していない仕事だったためか、音無さんは首をかしげると、失礼しますね、と言って俺のパソコンを覗き込む。
そして、画面を確認して、顔をほころばせた。

「まぁ……。そういうことですか。……そういえば、もうすぐそんな時期でしたね」
「はい。事務所でもちゃんとやる予定ですから、当日はみんなのスケジュールを合わせてます」
「喜んでくれるといいですよね、美希ちゃん」
「きっと喜んでくれますよ。……よし、終わった」

一区切りついたところで大きく伸びをした後、俺は自分の頬を叩き、気合を入れ直した。

「さあ、そのためにも、今日も頑張るとしましょう」

雑談もそこそこに仕事に集中すると、そこからの時間は速い。
律子が来て、社長が来て、気付けばもうみんなが事務所に集まるような時間になっていた。




8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 11:59:12.24 ID:WqT9Qbdi0


「そろそろだな……」

時計を確認して呟いた、と同時にドアが開いて、春香と千早が入ってくる。
俺は二人のところまで行くと、美希がまだ来ていないことを確認した。

「どうしたんですか、プロデューサーさん?」

「いいニュースだよ、二人とも。……実は、例の話が決定したんだ」

その言葉に、二人は顔を輝かせた。

「本当ですか!? じゃあ……」

「ああ。二人は今日のスケジュールは午後からだったよな? それで、これからそのことで打ち合わせがしたいんだけど……」




9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:05:32.11 ID:WqT9Qbdi0


そこまで言ったところで、再びドアが開く。
見ると、美希、響、貴音の三人がちょうど入ってきたところだった。

「あ、ハニー! おはよう!」

俺を見つけるなり、こちらに向かって走ってくる美希。
これでは話を続けるのは難しそうだった。

「あーっと……。すまん、後で呼ぶから、この話は後でするよ」

俺が急いで話を終わらせたのと、美希がすぐ近くまで駆け寄ったのは、ほぼ同時だった。




10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:09:35.32 ID:WqT9Qbdi0


「春香と千早さんも、おはよう! みんなで何の話してたの?」

「いや、ただの仕事の話だよ。それより、美希の今日のスケジュールは……午前中は貴音たちとレッスン、午後から雑誌の取材だったな」

仕事の確認を始めると、美希は口をとがらせて、不満げな顔で体を寄せてくる。
長い髪からふわっといいにおいが漂い、思わず顔を背けた。

「えー、仕事の話? ミキ的には、仕事の話もいいけど、それよりハニーのこともっと話してほしいって思うな」

「俺のことって……お前はアイドルなんだから、そういうのは控えてくれよ」

なおも距離を縮めようとしてくる美希をかわしながら、デスクで作業している律子に目で助けを求める。
律子は一度こちらを横目で見ると、深いため息をつきながら立ち上がった。




11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:16:14.01 ID:WqT9Qbdi0


「ほら美希、プロデューサーが困ってるでしょ。プロデューサーの言うとおり、あんたはアイドルなんだから、少しは自覚を持ちなさい。ゴシップ誌にすっぱ抜かれたりしたらどうするのよ」

律子に首根っこを掴まれ、ずるずると引き離される美希。

「でもここは事務所だし、誰にも見られたりしないよ? 律子……さんもハニーも、気にしすぎなの」

「またあんたはそういうこと言う! いい、美希、普段からの意識がいざというときに影響してくるの」

「むうー……律子はうるさいの」

「律子『さん』でしょ?」

「やっぱりうるさいの……」

美希は逃げるように部屋の奥へ向かう。律子はもう一度深いため息をついた後、ゆっくり椅子に座りこんだ。




12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:20:33.02 ID:WqT9Qbdi0


「まったく……あの子は本当に自分がアイドルだってわかってるのかなぁ……」

ぶつぶつとつぶやく律子を見て、思わず苦笑する。

「それでも前に比べたら、大分マシにはなったけどな」

「またそうやって甘いことを……。プロデューサーがそんな風だから、美希がいつまでたっても甘えるんです! 今日だって、私がわざわざ言わなくても、プロデューサーが毅然とした態度をとっていれば……」

「いつも迷惑かけるな……すまん」

「いいですよ、慣れましたし。そんなことより、春香たちを待たせてるんじゃないんですか?」

「あっ……すっかり忘れてたよ。ありがとう、律子」

「いいですから、早く行ってきてください」




13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:25:37.62 ID:WqT9Qbdi0


本日三度目のため息とともにいう律子。それに従い、おとなしく二人のもとへ向かう。

二人はソファに座って、クッキー――春香が作ってきたのだろう、小さい箱に可愛らしく並べられている――をつまんでいた。

「悪い、待たせちゃったみたいだな」

「あ、プロデューサーさん! プロデューサーさんも、お一つ食べませんか?」

そう言ってクッキーを差し出してくる春香。俺はその中から一つをつまみ、一口かじった。

「あの……どうでしょう?」

「ああ、おいしいよ。……って、本題を見失うところだった。さっきの続きを話そう」




15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:30:31.11 ID:WqT9Qbdi0


事務所内には美希がいるので一旦二人をしたの公園まで連れ出した。
そして、用意してあった資料を手渡す。
二人はその資料をぱらぱらとめくると、同時にはっと顔を上げた。

「十分……そんなに時間、いただけるんですか?」

目を丸くして、春香が聞いてくる。
千早も、何かを言いたそうな顔をしていた。

「ああ。もうみんなも立派な人気アイドルだからな。多少の無理は通るさ。必要なら曲も用意できるし、基本は春香たちに任せる方針で行こうと思う」

今回の案はスタッフとも、思い切って好きなようにやらせてみる、という考え方で一致した。
一も二もなく協力を申し出てくれたディレクターの言葉に、美希を含め、みんなの人気が高い水準にあることを、改めて実感させられる。

その後も二人とのミーティングを続け、実際の計画をまとめて、その日はお開きとなった。




17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:38:06.71 ID:WqT9Qbdi0


それから数日。俺は生っすかの収録に同行していた。

「今日はハニーが一緒だから、仕事もいつもより楽しいの!」

車での移動中、美希はずっと上機嫌だった。
そんな小さなことでも、一緒に来てよかったと、少しくすぐったい気持ちになる。

収録スタジオについてからも、美希はそのモチベーションを維持しながら、てきぱきと生放送をこなしていく。
そして、美希は知らされていない、「予定」の十分が訪れた。

「じゃあ次は……」

「ちょっと待った、美希!」

次のコーナーに移ろうとする美希を遮って、春香が用意されていた台本を読み始める。




19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:45:17.79 ID:WqT9Qbdi0


「ここで、大事な発表があります!」

「え? え?」

もちろん美希の台本には書かれていない展開に、美希一人が戸惑っていた。

「今週23日は、なんと! ここにいる美希の誕生日なんです!」

春香の合図でケーキ――今日の『今週の差し入れ』のコーナーも兼ねているのだが――が運び込まれ、千早からプレゼントが手渡される。
初めは呆けていた美希だったが、段々状況がつかめてくると、その顔に満面の笑みを浮かべ、春香に飛びついた。

「ありがとう、春香、みんな! とっても嬉しいの!」

抱きつかれて慌てる春香を見ながら、プランが成功したことを確信する。
今まで秘密裏に話を進めてきたのは、うちのアイドルには隠し事が苦手そうなのが多いからだ。
事実、はじめからこの計画を知っていたのは春香と千早だけだった。




20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:51:25.63 ID:WqT9Qbdi0


それが功を奏したのか、番組は美希の新鮮な驚きを交えながらつつがなく進行し、無事に放送を終えた。
その後、俺はセット裏でスタッフと次回の放送の確認をしていた。

「次回は『響チャレンジ』の尺を長めに取ってスカイダイビングに挑戦してもらう、ということでしたよね?」
「ええ、それで響はその日、結構ハードなスケジュールになるんですけど……」

と、その時。突然の衝撃に、俺は思わず前につんのめった。
スタッフも驚いたような顔をしている。
美希が正面から飛びついてきたのだった。

「美希? どうしたんだ、急に?」

「春香から聞いたよ。今日のこと、春香と千早さんとハニーが考えてくれたんだよね。ミキ、感激しちゃったの!」




22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 12:55:35.34 ID:WqT9Qbdi0


俺の体に回した腕にますます力を込める美希。
しかしここは収録スタジオ。
さらに言えば、番組スタッフの目の前だ。

見ると彼は何かを納得したような顔で苦笑いをしている。
無理もない。
現場に居合わせたプロデューサーに出演アイドルが突然の抱擁、あげくの果てにはそいつのことをハニーと呼び出す始末。
これでは勘違いをしない方がどうかしている。

「美希、分かった、分かったから離れろ! ここは事務所じゃないんだぞ!」

言ったあとで、盛大に墓穴を掘ったことに気付く。
これではまるで、事務所ではいつもくっついているみたいじゃないか。




23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:00:40.83 ID:WqT9Qbdi0


苦笑いを呆れ顔に変えて、とうとうスタッフは去ってしまった。

結局、勘違いは訂正できなかったけれど、美希の言動は以前からスタッフに知れ渡っている節がある。
いわゆる「星井美希とそのプロデューサーのカンケイ」は、半ば生っすかスタッフ内の公然の秘密となっているのかもしれない。
さっきのスタッフも、「またか」と言わんばかりだったし、彼もそれを知っていたことは想像に難くない。

「……まぁ、大丈夫か」

ここのスタッフにはもう知られているわけだし、今更スキャンダルになるようなこともないだろう。
少なくとも過敏になる必要はない。

難しく考えるのをやめ、俺は美希の頭に手をのせた。

「ともかく、誕生日おめでとう、美希」

「うん……ありがとう、ハニー!」




27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:07:18.15 ID:WqT9Qbdi0


その後、俺たちは来た時以上に機嫌がいい美希を抑えながら765プロに戻った。
事務所でも少し早いパーティーを開いて、ささやかながらも美希をお祝いした。
美希はその日、一日中笑顔が絶えなかった。



その週の金曜日。
美希の誕生日当日となった。
今日は勤労感謝の日ということで、世間的には祝日なのだが、芸能界にはそんなものはないに等しい。
太陽が真上に上る頃、俺は美希の営業先に足を運んでいた。

いつもだったら全員と定期的に話す時間を設けるため、ローテーションで送迎をするのだが、今回は少し特別だ。
というのも、日曜日のパーティーで、サプライズに気持ちがいってしまっていたこともあって、俺はプレゼントを忘れてしまい、むくれた美希に今日の午後の時間を美希のために割くようにお願いされてしまったのだ。




29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:13:41.53 ID:WqT9Qbdi0


パーティーの前までにはと思い、残っていた仕事をすべて終わらせていたのが幸いして、しばらくは多少の余裕がある。

音無さんに事務所を任せきりにするのは心苦しかったが、正直に話したら快く許してくれた。
いつかきちんとお礼をしなくてはいけないと思う。

「それじゃ、お疲れさまでしたなのー!」

無事に今日の仕事を終え、美希がかけてくる。
心なしか、その足取りはいつもより軽いように思えた。

「ハ……じゃなかった、プロデューサー! お仕事終わったよ! だから、早く行こ?」

この前のように「ハニー」と呼ぶのを、すんでのところで抑えた美希。
あのあと話を聞いた律子にきつく説教、もとい注意されていたから、それがよほどこたえたのだろう。




30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:17:59.79 ID:WqT9Qbdi0


「よし、じゃあ行くか。一応、できるだけの変装はしておけよ」

「ちゃんと分かってるの! ほら、早く行くよ?」

バッグの中から取り出した帽子を目深に被ると、美希は俺の手を掴んで急かしてくる。

……たまにはこんな日も、悪くないか。

美希にぐいぐいと引っ張られながら、俺は小走りに歩き出した。




31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:23:41.30 ID:WqT9Qbdi0


「まずはここなの!」

美希が最初に俺を連れてきたのは、映画館だった。

今日、どこに行くかは美希に一任している。
美希は何やら気合が入っているようで、今朝「バッチリ考えてきたの!」と胸を張っていた。

「見る映画も、もう決めてあるのか?」

そういうと、美希は黙って映画の広告を一枚手渡してくる。
そこには、最近話題の俳優二人のアップ。

「恋愛モノか……」

「ミキね、これのCMを見たときからハ……プロデューサーと一緒に見たいなって思ってたんだ」




34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:29:13.69 ID:WqT9Qbdi0


美希が俺のことを「ハニー」と呼ぶようになってしばらく経つが、その間こういった小さなアプローチはたびたびされている。
美希のような子から好かれるのは、男としては非常に嬉しいことなのだが、立場の問題というものがある。
ましてや美希はまだ中学生なのだ。
美希のためにも、男としてもプロデューサーとしても迂闊な行動はとれない。

「……美希が見たいって言うならいいけど、俺なんかとでいいのか? 年も離れてるし……」

だから、俺は出来る限りしらばっくれる。
今はただ、波風を立てないことに専念しようと思った。

「そんなの決まってるの! ミキ、プロデューサーと一緒だから見たいんだよ?」

「それなら、いいんだけど……」




35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:36:30.16 ID:WqT9Qbdi0


結局、美希が見たがっている恋愛モノを見ることにして、館内に入る。
席にはもう何組ものカップルが座っていて、どことなく甘い雰囲気がそこかしこから漂っていた。

「……じゃあ、そこらに座るか」

なんだか落ち着かなくて、焦るように適当な席に腰掛ける。
そしてしばらくすると、映画の本編が始まった。

内容はありきたりなもので、教師と生徒の許されざる恋愛がテーマ。
劇中では俳優の迫真の演技が続いていたが、正直なところ、俺はあまり感情移入できなかった。
あいにくと恋愛経験に疎く、恋人の感情の機微などは分からなかったのだ。

退屈な時間を持て余し、横をちらりと見る。
美希は真剣な表情で、スクリーンを食い入るように見つめていた。
やはり、美希くらいの年ごろの女の子にとって、恋愛は憧れの対象なのだろう。

……これでその好意が俺に向いてさえいなければ、素晴らしいことだったのに。
美希に悟られないように、小さく嘆息する。




36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:41:59.98 ID:WqT9Qbdi0


ほどなくして映画は終わり、エンドロールが流れる。
最終的に二人は他の全てを捨てて駆け落ちをした。
明るくなった館内を見渡すと、涙ぐんでいる人もちらほら見られる。

美希はというと、目にいっぱい涙を溜めて、こっちを見つめていた。

「すっごく感動したの……。プロデューサー、ミキ達の間にも障害は多いけど、一緒に頑張ろうね……」

「何を頑張る気だよ……。さぁ、もうあんまり時間も無いぞ。ほら、涙吹いて」

ポケットからハンカチを取り出して、美希の涙をぬぐう。美希はうれしそうに笑った後、勢いよく立ちあがった。




46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 13:57:28.73 ID:WqT9Qbdi0


「こうしちゃいられないの! これから服屋さんにも行きたいし、ゆっくりしてる場合じゃないの! 行こ、プロデューサー!」

またも美希に引っ張られて映画館を後にする。
金髪の少女が、どう見ても成人している男を連れ回す様は、どうしても周囲の注目を集めてしまったが、不思議と美希を止める気にはならなかった。



初めは高かった日も、次第に落ちてきて、夕方。
空があかね色に染まっていくのを、俺と美希は河川敷に座って眺めていた。

映画を見てからは、美希のお気に入りのアクセサリーショップに行ったり、俺の服を見つくろってもらったり。
美希は終始はしゃいでいて、俺は振り回されっぱなしだった。




47カップじゃないよー:2012/11/23(金) 14:03:24.25 ID:WqT9Qbdi0


……これじゃ、いつものプロデュースとそんなに変わらないな。
そんなことを思って、小さく笑みをこぼす。いつも美希がありのままの姿で、俺との時間を楽しんでくれていることが、少し嬉しかった。

ただ、一つだけ、いつもとは違うことがあった。
美希は今日一日、一度たりとも俺のことを「ハニー」とは呼ばなかったのだ。
何度か言いかけていたようだったが、途中で必ずはっとしたような顔をして、「プロデューサー」と呼び直す。
美希は律子の言ったことをいつまでも気にするようなタイプではない。
美希の中で、何か心境の変化があったのだろうか。

「なぁ美希、今日は俺のこと、ハニーって呼ばないんだな」

「……えっと、ミキね、この前律子に怒られちゃったから、もしかしたらハニーって呼んでたら何か大変なことになっちゃうのかなって思ってたの。だから今日は人前では呼ぶのやめてみたんだけど、いつもとぜーんぜん変わらなかったってカンジ」




49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:08:58.27 ID:WqT9Qbdi0


無理もない。
好き放題成人男性を連れ回す美少女の図。
これなら「ハニー」なんて呼ばなくても目立つに決まっている。

「それでもミキ、今日は一日ガマンしたんだよ? ……でも、ここなら誰もいないし、もういいよね?」

そういうと、美希は腰を上げてゆっくり距離を詰めてくる。

「……ミキ、今日はずっと楽しかったよ。一日わがままに付き合ってもらって、嬉しかったの。ありがとう、ハニー」

「気にするな。みんなのわがままに付き合うのも、立派なプロデューサーの仕事だからな。……っと、そうだった。日曜日に用意できなかったからな。はい、美希。誕生日、おめでとう」

俺は用意してあったプレゼントを取り出して、美希に手渡した。




51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:14:20.13 ID:WqT9Qbdi0


「……開けても、いいよね?」

俺が頷くのを確認してから、包みを開ける美希。
ほどなくして、隣から小さな歓声があがった。

昨日の夜、急いで買いに行ったピンクのマフラー。
それを美希は胸にかき抱いた。

「ミキ、感激しちゃったの……。大事にするね、ハニー!」

美希が突然、俺の胸に飛び込んでくる。

「おい、美希……はぁ」

注意しようとしたが、美希の心底嬉しそうな顔に、毒気を抜かれてしまう。

……仕方ない。今日くらいは、いいか。

幸いあたりに人がいる様子はない。
それからしばらくの間、美希は腕から離れようとしなかった。




53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:18:56.48 ID:WqT9Qbdi0


次の日。
朝、いつものように事務所に着くと、律子の声が聞こえてきた。

「美希、もうそろそろ起きなさい。先生が来る前に、レッスンの自主トレやっててもいいんじゃない?」

「んー……眠いしめんどくさいからやめとくの……あふぅ」

そのまま倒れこんで、寝息を立て始める美希。

「あ、ちょっと、美希! ……はぁ」

「いつも苦労してるな、律子」

デスクにつきながら律子をねぎらう。
律子は、またいつものようにため息をついた。




55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:23:59.98 ID:WqT9Qbdi0


「もうすぐレッスンの時間だってのに……あの子、ホントに大丈夫なのかしら……」

美希の仕事ぶりを憂う律子。
実力を分かっているからこそ、やる気に欠けるところのある美希が心配なのだろう。
そんな律子を安心させるように、俺はそれを否定する。

「そんなに神経質になることもないんじゃないか?」

「そうですか? 私はいつか、美希がうっかりとんでもないミスをするんじゃないか、って気が気じゃないですよ」

「今はあんな感じだけど、いつも仕事の時には真剣な顔してるだろ? ああ見えて、美希は美希なりにけじめをつけてるんだよ。最近は美希のキャラも受け入れられてきたし、大丈夫だって」

「確かに……それは一理あるかもしれませんね。……分かりました。プロデューサーの言う通り、今は見守ることにします」




56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:27:07.44 ID:WqT9Qbdi0


美希はだんだんやる気の無い面が減り、一流のアイドルとしての姿に近づきつつある。
今はまだそれには力が及ばなくても、いつか必ずそういった存在になるだけの資質を美希は持っている。
だから、俺が美希を支えていかなければいけないんだ。

この時の俺は、確かにそう信じていた。
そして、それが大変な驕りだと気付くのに、そうは時間はかからなかった。




58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:30:48.14 ID:WqT9Qbdi0


数日後の金曜日。
みんなのスケジュールを整理し直すためにデスクに向かっていると、大きな音がしてドアが開いた。

「プロデューサーさん! 大変です!」

息も絶え絶えにかけこんできたのは音無さん。
普段見ないような真剣な、そして蒼白な表情でこちらを見ている。

「どうしたんですか、音無さん?」

その問いかけに、音無さんは黙って手にしていた雑誌を渡してくる。
開かれていたページを見て、俺は絶句した。




61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:35:21.48 ID:WqT9Qbdi0


『アイドル星井美希、担当プロデューサーとの知られざる関係』

見開きにでかでかと掲載された文字。
そして、見覚えのある河川敷で男に抱き着いている金髪の女。

頭が理解を拒み、うまく考えがまとまらない。
俺はその時、世界の全てが止まってしまったかのような感覚を覚えた。
我に返ったのは、音無さんが強めに俺の腕を叩いてからだった。

「……これ、間違いなくプロデューサーさんですよね」

「……はい」

いつになく険しい目をした音無さんに問い詰められる。

「一応確認しますけど、本当に美希ちゃんとそういう関係なわけじゃ、ないんですよね?」

「ええ。この前の金曜日、美希に一日付き合った時の写真ですね……。すみません、完全に俺のミスです……」

「過ぎてしまったことは仕方ありません。でも、これからの美希ちゃんの仕事のことを考えると……」




62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:40:39.20 ID:WqT9Qbdi0


と、そこでまたドアが開く。
立っていたのは、美希。
……手にしていたのは、件の雑誌。

「……おはよう、美希」

恐る恐る声をかけるも、美希は無言で俺の横を通り抜ける。
その後ろ姿を、音無さんが心配そうな目で見つめていた。

その後真と雪歩の付き添いで営業に出向き、一日を過ごす。
久々に時間のかかるドラマ撮影が入り、二人と事務所に戻る頃には、もう日付も変わろうかという時間となっていた。

「今日はなかなかいい感じでしたよね、プロデューサー!」

「ああ、真も結構女の子らしさが出てきたよな」

他愛のない会話をしながらも、考えることは朝のことばかりだった。
それを悟られないように、当たり障りのない言葉をつなげる。




64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:47:06.18 ID:WqT9Qbdi0


事務所についた後、届いた郵便を整理する。

「今日はなんだか、お手紙が多い気がします」

「そうだな……おっと」

いつもの二倍ほどの量の手紙を掴み切れず、一枚落としてしまう。

「あ、私が拾いますね」

落ちた封筒を拾う雪歩。
しかし、次の瞬間。
封筒を見た途端、雪歩の笑顔が凍りついた。

「どうしたんだ、雪歩?」

雪歩は封筒と俺の顔を交互に見比べた後、震える手でそれを差し出した。

「プロデューサー、これって……」

「……ああ」




65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:50:41.40 ID:WqT9Qbdi0


まっさらな白い封筒。
その表面を透かして、大きな黒い文字。
死ね――封筒の上からでも分かる。
書かれていたのは、誹謗の言葉だった。

なにか嫌な予感がして、急いで他の封筒も開く。
俺の目に映ったのは、あらん限りの罵詈雑言。
中には、脅迫状と思しきものまである。
その全てが、どこかで調べ上げたのだろう、俺の宛名で送られていた。

今まで見たことのない光景だ。
真も雪歩も未だかつてなく険しく、驚いた、怯えた表情をしていた。




66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:55:06.58 ID:WqT9Qbdi0


「あの、プロデューサー、このことみんなに……」

「言うな」

真の言葉を遮って、俺は二人を牽制した。

「このことは、誰にも言うな。社長には俺から報告するが、それ以外には口外しないでくれ。……みんなに余計な心配をかけたくはないからな」

みんなにこのことが知れたら、事務所内の混乱は必至だ。
プロデューサーとして、それだけは何としても食い止めなければならなかった。

「……分かりました」

「ありがとう。今日はもう遅いから送っていくよ。二人ともお疲れ様」




67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 14:59:08.31 ID:WqT9Qbdi0


折り返し、多少強引に二人を家まで車で送って、その日は家に帰った。

家に着いて、スーツのまま冷蔵庫の中のビールを一気にあおる。

……何が暗黙の了解だ。何がアイドルの自覚だ。
それに甘えていたのも、社会人としての自覚が足りなかったのも、自分だった。

拳を握りしめ、テーブルを強かに殴りつける。
缶に手が当たって、中のビールが少しこぼれた。




69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:06:25.49 ID:WqT9Qbdi0


次の日。
またも届いてくるたくさんの悪質な手紙を処分し、社長室へと向かった。

「君か。ここに来るとは珍しい。一体、どうしたんだね?」

昨日のことを事細かに説明する。
美希とのスキャンダルのことや、送られてきた手紙のこと。
そして、それを口外しないで欲しいこと。

最後まで静かに聞いていた社長は、俺が話し終わると、重々しく頷いた。

「……分かった。このことは誰にも話さないでおこう。……しかし、それはそうとして、昨日から美希君の元気がないのは知っているだろう? あのままでは仕事にも支障が出るだろうし、心配だ。君が、美希君を元気づけてあげてくれたまえ」

「……はい」




72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:15:50.02 ID:WqT9Qbdi0


昨日の今日で美希にこの話を持ちかけるのは気が引けたが、仕方ない。
美希が座っているソファの向かいに腰を下ろす。

「おはよう、美希。……ごめんな、俺の不注意でこんなことになっちゃって」

「……プロデューサーが謝ることじゃないの。全部、ミキのせいだから」

顔をちらりとも上げようとせず、淡白に呟く美希。

「そんなことないよ。美希のせいなんかじゃない」

「……ありがとう、プロデューサー」

美希はそれだけ言うと、逃げるように事務所を出ていってしまった。

……事務所の中なのに、ハニーって呼ばれなかったな。

そんなことを考えている自分に気付き、思わず自嘲の笑みを漏らす。
これで俺の求めていた関係に戻れたじゃないか。
今回のことで、美希も俺に愛想が尽きたんだろう。
今更そんなことを気にするなんて、くだらない。
実に、くだらない。




74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:22:02.35 ID:WqT9Qbdi0


美希のスキャンダルが出回ってから、俺のもとには毎日のように悪戯、嫌がらせの類の手紙が押し寄せた。
小鳥さんにも事情を話し、アイドルたちには知られないよう動いたが、問題はそれだけに留まらなかった。

美希の仕事が、目に見えて減り始めている。
考えてみれば当然の話だ。
スキャンダルで炎上しているアイドルを好んで使う奴はいない。

そんな状況が十日ほど続いた、ある日。
その日はひさしぶりに美希に仕事が入り、真と一緒に三人でスタジオまで赴いていた。
収録前に軽いミーティングを行い、今日の予定を確認する。

「……じゃあ、今言った通りに頼むよ。美希は久々の仕事だ。頑張れよ」




75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:26:47.38 ID:WqT9Qbdi0


「はいっ!」

俺のねぎらいに、大きなガッツポーズで返す真。しかし、

「……わかったの」

美希は小さく頷いただけだった。
やはり、俺は美希の心証を害してしまっているらしい。
隣で真がおろおろと俺たちを見ていた。

居心地の悪い空気から逃げたくて、二人を急かしてセット入りさせる。
美希と一緒の空間にいることが、責められているようで苦痛だった。




76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:30:58.18 ID:WqT9Qbdi0


撮影が始まると、意外にも美希は一瞬で「アイドル」の顔に切り替えた。
その後の真と歌う曲も難なくこなし、一切スキャンダルの影響を感じさせず、完璧な形で収録を終えた。

俺はセットのずっと遠くで、それを見ていた。

撮影終了後、楽屋の中で二人を待つ。
その間、俺は今日の美希の活躍っぷりを振り返っていた。

「……あいつ、あんなに調子よかったのか」

俺と話していた時は、顔を上げようともしなかったのに。
今日の美希の表情は、紛れもないプロのもので。
そこには一片の迷いも見当たらなかった。




77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:36:00.39 ID:WqT9Qbdi0


この分なら、近いうちにスキャンダルの話も忘れられていくだろう。
美希は、それほどまでに実力を見せている。
今の美希は、完成形へと近づきつつあるのだ。
そこに、俺は果たして必要なのだろうか?

仕事を取ってきて、美希にそれを渡すだけの関係。
本当は、美希もそれを望んでいるんじゃないか。
俺はそう思えてならなかった。

美希はあの日以降、どんなところでも俺のことを「ハニー」とは呼ばなくなった。
それどころか、一日の会話数もどんどん減っている。
公私ともに、俺は美希にとって不要な存在になりつつあるのだろう。
だったら、早々に身を引くのが美希のためなんじゃないだろうか。




80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:44:06.34 ID:MzS1yGngO


正直こんな状態なったら辞めるしかないよな




81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:45:12.79 ID:WqT9Qbdi0


そんなことを考えていると、不意に楽屋の扉が開いた。

「……真、一人か? 美希はどうした?」

「美希は、スタッフさんと話してます。……なんか、来週も出て欲しいらしくって」

それは事務所にとっては朗報だ。
しかし、どうにも真は浮かない顔をしていた。

「どうしたんだ、真? そんな顔して。765プロの仲間の大活躍、嬉しいことじゃないか。美希は本当にすごいな。……もう俺なんて、必要ないくらい、な」

こんなこと、真に言うつもりなんてなかったのに。
真の表情が固まる。




82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:52:17.03 ID:MJKX/6in0


ハッピーエンドだよな?




83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:53:41.44 ID:WqT9Qbdi0


「え……? それ、どういうことですか、プロデューサー…?」

「……今言った通り、美希はすごい奴なんだよ。そんな美希と、スキャンダルを持ってくるような俺が一緒にいたら、美希に迷惑がかかるだろ。最近じゃあいつの方が俺から離れていってるし。もう、俺は不要なんだよ」

毒を食らわば皿まで。
言ってしまったことはしょうがない。
俺は覚悟を決めると、自分の胸中を洗いざらい真に話した。
その間真は、一言も口を開かなかった。

真は俺が話し終わると、うつむいたまま、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
その表情は、杳として知れない。
そして、至近まで真は距離を詰める。




84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 15:57:45.13 ID:WqT9Qbdi0


次の瞬間。
俺は思い切り右を向いていた。
遅れて、頬に熱い痛みを感じる。
真に横っ面を張られたと気付いたのは、前を向いて、これ以上なく怖い顔をした真を見てからだった。

「なんで……なんでそんなこと言うんですか……プロデューサー。あの美希が! あんなに苦しそうにしているのに! プロデューサーは気が付かないんですか!?」

怒号。
見れば真の目には涙がにじんでいる。
こんなに怒りを露わにした真を見るのは、初めてだった。




86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:01:52.35 ID:WqT9Qbdi0


「美希が……苦しんでいる?」

「そうですよ! 雑誌で叩かれて、それを気にしてプロデューサーとも距離を置いて! それなのに、プロデューサーに心配かけないように、仕事だけは頑張って……。
 あんな、今にも壊れそうな美希、初めて見ましたよ! それなのにプロデューサーは、そんな美希から離れる気なんですか? 美希には、プロデューサーが必要なんですよ!」

真の言葉に、今一度自問させられる。
俺は、美希の傍にはいないほうがいいのか?
俺は美希にとって不要なのか?




88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:06:52.52 ID:WqT9Qbdi0


いや。

違う。

思い出せ。

必要かそうじゃないかなんて関係ない。
あの日、誓ったじゃないか。
俺の夢は。

みんなをトップアイドルにすること――

何を逃げているんだ。
美希の傍にいる必要、なんかじゃない。
俺が、美希の傍にいたいんだ!




89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:10:34.94 ID:WqT9Qbdi0


なおも言葉を重ねようとする真を手で制し、真剣な目で見据える。

「ありがとう、真……目、覚めたよ。俺が間違ってたな」

「……そう思うんだったら、ちゃんと行動で示してあげてくださいね」

手厳しく返されてしまったが、それでも真は、安心したように笑っていた。




91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:18:09.73 ID:WqT9Qbdi0


翌朝、俺は美希と話をしようと、誰の送迎もすることなく美希を待っていた。
しかし、

「美希ちゃん、遅いですね」

そう。
美希が事務所に来ないのだ。
音無さんも、心配そうな顔をしている。

「携帯にも出ないしな……どうしたんだろう……」

「あの、プロデューサー」




92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:24:30.71 ID:WqT9Qbdi0


後ろから不意に声がかかる。
振り返ると、そこに立っていたのは雪歩だった。

「どうしたんだ、雪歩?」

「あの……実は、その……」

言いづらいことなのか、もじもじとしている雪歩。
そのまましばらく様子を見ていると、やがて雪歩は意を決したような顔をして、いきなり頭を下げた。

「ごめんなさい! プロデューサーの手紙のこと、話しちゃったんです! 私が何か知ってるって感づいてたみたいで、昨日、美希ちゃんに問い詰められて……」

「ああ、そのことか……。そうか……まぁ仕方ないな。分かったよ」




93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:35:05.83 ID:WqT9Qbdi0


しかし、雪歩の表情は晴れない。

「あの……私、多分ですけど……美希ちゃん、プロデューサーが嫌がらせを受けてるの、自分のせいだって思っちゃってるのかも、って思うんです」

「……何だって?」

「だって美希ちゃん、スキャンダルのことですごく自分を責めてたから……」

血の気が引くのが感じられる。
今、美希が一人で自責の念に駆られているかもしれない。
それを思うと、いてもたってもいられなかった。

「……すみません、音無さん。また仕事を任せないといけないかもしれません」

「ふふっ、いいですよ。でもそのかわり、ちゃんと美希ちゃんを連れてきてくださいね」

「はいっ!」

俺はドアを開けるのももどかしく事務所を出ると、急いで車に飛び乗った。




94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:38:36.83 ID:WqT9Qbdi0


美希の家。
親御さんに事情を話して、美希の部屋の前まで通してもらった。
ドア越しに、聞いているかも分からない美希に声をかける。

「……美希」

返事はない。
それでも、声をかける。

「美希……雪歩から聞いたよ。俺が嫌がらせの手紙もらってること、聞いちゃったんだな。だけど、美希が気にするようなことじゃない。俺の不注意が、すべての原因だ」

「そんなことないの!」

ドア越しに伝わる声。美希の声が聞けて、少し安心する。




96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:43:18.71 ID:WqT9Qbdi0


「ミキが……全部好きでやってることだから……放っておいて欲しいの。ミキがプロデューサーのこと好きだと、ミキがプロデューサーと一緒にいると、プロデューサーに迷惑がかかるんだよ。
 だったら……ミキはもうプロデューサーを好きでいたくない。傍になんかいたくない。それが……プロデューサーの幸せだと思うから」

その言葉に、俺は思わず小さく笑ってしまう。
ああ、俺たちは……。
お互いを大事に思って。
自分を責めあって。

それでも、俺は真に目を覚ましてもらった。
だから、次は俺の番だ。




98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:51:17.52 ID:WqT9Qbdi0


「美希、お前は一つ大きな勘違いをしてるよ。俺の幸せは、美希と離れることなんかじゃない。俺の幸せは……美希が幸せになることだ。美希がそんな顔してるなんて、耐えられないんだよ。
 ……俺は、美希が好きだから。だから、また俺に、笑顔を見せてくれないか?」

ゆっくりと、扉が開く。
そこにいたのは、目を真っ赤に腫らした、ぼさぼさの髪の女の子だった。

「おいで。……もう無理しなくても、いいから」

一歩美希に寄って、その体を抱きすくめる。
中学生とは思えないプロポーションを持った天才アイドルは、俺が思っていたよりもずっと小さく、儚かった。

「ハニーっ……ハニーっ……寂しかったよ……」

離れた距離を、離れた時間を取り戻すように。
俺たちは温もりを分かち合った。




99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/11/23(金) 16:52:45.60 ID:ym4Mkbc50


えんだー




101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:54:13.28 ID:+rzUrBEm0


いやあああああああああああ




103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:56:39.83 ID:WqT9Qbdi0


さらに一週間が経った。
美希の仕事っぷりがよほど目覚ましかったのか、追加のスクープが全く得られなかったのか、次第に美希の評判は回復し、俺のところに手紙が来ることもなくなってきた。
また何かあれば炎上しかねないのは確かだけど、その心配もないはずだ。

というのも、美希は俺のことをもう「ハニー」とは呼ばないし、くっついたりもしないらしい。
曰く、「プロデューサーは、ミキが大人になったら迎えに来てくれるって信じてるから、その時までお預けなの」だそうだ。
そこまでの信頼を得ていることに、何だかむず痒い喜びを覚える。

「……必ず、迎えに行くとも」

誰に言うでもなく、小さく呟く。
高い冬空に、俺の声だけが遠く響いていった。




104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:58:07.93 ID:WqT9Qbdi0


はい、これでssはおしまいです。
読んでくれた人、ありがとうございました。
ちなみに僕は真Pです。

美希、誕生日おめでとう!




106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 16:58:54.45 ID:6b0/Bs310


おつなの




110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 17:02:32.29 ID:mHoHLd4V0



今日は美希いっぱいだな




引用元:美希「ハニーとプロデューサー」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1353638450/



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[ 2012/11/24 05:27 ] [ 編集 ]
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