2012
11/04
日
1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 01:20:22.57 ID:0AJopnuu0
仕事の前、わたしは事務所で時間を潰していた。
何気なくプロデューサーを見つめる。指先に鮮やかな色をふと見つける。
「あ、爪……」
パソコンと見詰め合っているアイツに向かって呟いた。
わたしの呟きに気付かず、仕事を続けている。
「ちょっとプロデューサー。小指の爪、赤くなってるわよ」
「え、うわっ!?
~ッ、気付かなかった!」
「で?それはなんなの?血?」
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2 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 01:25:11.53 ID:0AJopnuu0
「いや、マニキュアだよ。マニキュア」
「? アンタ女装趣味でもあるの?」
「そんなのあるわけないっつーの
多分、イタズラだよ。寝てる間にやられたかなあ……」
誰に、とは聞かなかった。
コイツはモテるのだ。このわたしにに好かれているのだから当然だろう。
気分はちょっと複雑だけれど。
この間も綺麗な女の人を連れているのを見た。
寝ている間とコイツは言っていた。多分、きっと、そういう関係だ。
他にもたくさんいるのだろう。少し心が痛んだ。
4 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 01:29:53.79 ID:0AJopnuu0
「それで伊織さん……。お願いがあるんですけれど……」
「なによ。言ってみなさい?」
「除光液貸してもらえません?」
「持ってないわ。今日はずっとそのままね」
「マジか……。これどうするかな……」
「せいぜい真美たちに見つかってからかわれることね!にっひひ♪」
「やっぱり男ってそういうの嫌なの?」
わたしが問いかけると、プロデューサーは手を伸ばした。
指が長いせいか、マニキュアにあまり違和感を感じない。
6 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 01:35:27.86 ID:0AJopnuu0
「これはこれで面白いな。なかなかいい」
「似合ってるんじゃないか?」
「それくらいで楽しそうにしてるんじゃないわよ。
それじゃわたし、行くわね。律子に怒られるのは勘弁だし」
「だったらそのまま直行すればよかったじゃないか。
なんか用事でもあったのか?」
「あ、もしかして俺に会いにきたとか?」
「ッ! うっさいわね!ただちょっと早く起きすぎただけよ!」
「はは、だよな。ほら、行ってこい! 律子にどやされてもしらんぞ」
「ふん! もう行くわよ!」
「あ、一週間後明けときなさいよ。
せっかくのオフ、この伊織ちゃんと過ごさせてあげるわ!」
「いいわね? 一週間後、事務所、よ?」
「あぁ、わかったよ。一週間後、事務所、な」
「わかったならいいわ。じゃあね」
その日の仕事はあずさが驚くぐらい早く終わった。
10 : >>8ミス:2012/11/04(日) 01:45:34.52 ID:0AJopnuu0
―― ある日
やっぱり春香に聞くのが一番かしら。
こういうことは春香に聞くのが一番なんだけれど……。
よし、聞こう。丁度いるみたいだし、もう後には引けないわ。
「ちょっと春香? 少し、お願いがあるんだけど……」
「え? なあに? なにかあったの?」
「―――を教えて欲しいのよ……」
「それくらいならこの春香さんにまっかせなさい!」
「とびっきりのを教えてあげる!」
11 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 01:50:00.98 ID:0AJopnuu0
――― 一週間後
午後、事務所に一人。プロデューサーはまだ来ていない。
放っておいて生地をこねる。
作っているのはクッキー。
作る体裁はやよいにあげるためとただの練習。
本当はアイツと一緒に作るため。
一心不乱にこねているとアイツが来た。
頭には寝癖がついていて、寝坊していたことが容易に分かった。
「ずいぶんと早いのね」
「スマン、寝坊した」
12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 01:55:34.41 ID:0AJopnuu0
「知ってるわよ。罰としてコレ、こねなさい?」
「なんだコレ?」
「見たらわかるでしょ、クッキー。やよいへのプレゼント」
「ふーん、伊織でもそんなことするんだな」
「な?! 失敬ね! わたしだってこれぐらい作るわよ!」
春香に作り方を聞いたのはナイショ。
それから黙々と生地をこね続けているアイツを尻目に、わたしはお茶を飲んだ。
13 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 02:00:38.19 ID:0AJopnuu0
こね終えたクッキーに形を与えて焼けるのを待つ。
プロデューサーは相当疲れたのか机に突っ伏していた。
手に鮮やかな色を見つける。
「ねぇ、ちょっとアンタ。手、貸しなさい」
「え? なんで?」
「いいから。ほら、はやく貸しなさい」
そう言ってわたしはポーチから除光液を取り出す。
コットンに含ませて、無理やり手をとって爪をぬぐった。
剥がれかけてボロボロだった爪が綺麗になる。
14 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 02:06:00.03 ID:0AJopnuu0
「もう少し借りるわよ」
返事の有無は確認しない。
ポーチからマニキュア、ベースコート、トップコートを出した。
まず親指にベースコートを塗ってゆく。
速乾性なので小指を塗り終わる頃にはもう乾いていた。
マニキュアの色はピンクだ。
わたしの――ラメの入ったピンクのマニキュア。
「他人の爪って結構塗りづらいのね」
「おいおい、全部塗るのか」
「あったりまえじゃない! この伊織ちゃんに塗って貰えるんだから感謝しなさいよね!」
「あ、右手の準備もしときなさいよ。全部塗るんだから」
覚悟しときなさいよね!と言ってお互いに笑う。
16 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 02:10:21.07 ID:0AJopnuu0
「なんであのマニキュア落とさなかったのよ。あんなにボロボロだったのに」
「別れたんだ、彼女と」
言葉が出なかった。
「落としたら、全部なくなっちゃう気がしてさ」
「……」
「そんな顔するなよ。丁度落としたかったんだ。」
「ほら、はやく続きを塗ってくれよ。隠してるけど、ちょっとこの体制辛いんだ」
17 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 02:11:37.67 ID:0AJopnuu0
今、プロデューサーはどんな顔をしているのだろう。
前に塗られていたマニキュアは元カノのもの。
それを落として今度はわたしの色を彼に乗せていく。
「これで終わりか?」
「まだよ。乾いたらトップコートも塗るんだから」
塗り終わったら焼きたてのクッキーを二人で食べよう。
それからやよいや事務所のみんなの分をまとめよう。
「ふうん、たかがマニキュアでも随分面倒なんだな」
「その方が長持ちするのよ、にっひひ♪」
おわり
19 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 02:14:45.82 ID:meYU8WhP0
乙
あっさりしてるのも良いね
20 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 02:15:57.21 ID:0AJopnuu0
お付き合い感謝です
元ネタは「きょうのごちそう」より「うどん」です
ほぼそのまんまです
引用元:伊織「クッキー」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1351959622/
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誰の台詞だかわかりにくいのは俺の読解力が足りないせいなのか?
[ 2012/11/04 14:48 ]
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